「プロパガンダ」になるか

時事通信の記事;


最大規模の北朝鮮美術展=「プロパガンダ」との批判も−ウィーン

 【ベルリン時事】オーストリアのウィーンにある応用美術博物館で18日、北朝鮮の美術品を紹介する特別展「故金日成主席にささげる花」が始まる。北朝鮮国外で開かれる同国の美術展としては、過去最大規模という。
 出品される絵画は、労働者や平壌市内の様子を描いた油絵や水墨画など約100点。このほか、社会主義の象徴である赤を多用したポスターや、平壌の主体(チュチェ)思想塔の模型が展示される。
 同博物館のネーバー館長は「北朝鮮の芸術を考察する絶好の機会」と強調。ただ、「北朝鮮プロパガンダになりかねない」との批判の声も上がっており、プレッセ紙は「今年最も物議を醸しそうな展示会」と伝えている。(2010/05/18-07:19)
http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2010051800087

まあタイトルがアレではあるが。どういう団体が主催しているのか。北朝鮮政府或いはそのシンパ団体が絡んでいるのか。また、作品の提供者は? そういうことがわからない。また、カタログに掲載された解説論文はどんな感じなのだろうか。蘇聯や中国を含む社会主義アートの系譜の中に北朝鮮アートを位置づけているのだろうか。それとも独逸や戦時中の日本を含む全体主義アート? 或いは、朝鮮のフォーク・アートとの連続性と断絶性?
たしかに、「北朝鮮の芸術を考察する絶好の機会」ではあろう。では「北朝鮮プロパガンダになりかねない」のかどうか。内容が全然わからないということもある。それはキューレーションの仕方にもよるだろう。また、もし「プロパガンダ」の臭いがぷんぷんしている内容であれば、その意思があったとしても。「プロパガンダ」にはならないのではないかという気はする。信者や趣味者には(ステレオタイプ的な)満足を、反北朝鮮の人間には(ステレオタイプ的な)不満を提供するにすぎないからだ。
ところで、「応用美術博物館」ってどういうミュージアムなのか。「応用美術」ということはデザインなのか。だとしたら、北朝鮮の工業デザインや商品パッケージを展示した方が面白いのでは? 東欧における社会主義崩壊・蘇聯崩壊以降に、東欧の武骨なデザインが改めて〈かわいい〉デザインとして見出されたということがあった。中国でも国営企業の朴訥なデザインが〈かわいい〉デザインとして見直されているということもある。北朝鮮のデザインに〈かわいさ〉が見出されたとしたら、「プロパガンダ」は成功したことになるのか。
ヨーロッパにおける北朝鮮のリアリティというのはいまいちわからない。ヨーロッパ人にとって、北朝鮮というのはあくまでも遠い国なのではないか。そういえば、私は観に行く機会を逸したが、去年上海でも北朝鮮美術展が地味に開催されていた。