- 作者: 大塚英志
- 出版社/メーカー: 弓立社
- 発売日: 1990/12
- メディア: 単行本
- 購入: 2人 クリック: 6回
- この商品を含むブログ (5件) を見る
実家に置いてあって大塚英志『見えない物語 〈騙り〉と消費』(弓立社、1991)をぱらぱらと捲る。帯の惹句は「民俗学とマーケティングの見事な結合で、新しい消費パラダイムを大胆に予測!」とか「物語という見えないモノが商品になって大ヒットする時代を〈物語消費〉というキーワードで描く」。
先ず、「物語と消費の境界で」から「物語消費」の定義;
序 物語と消費の境界で
I 物語消費論の基礎とその戦略
II 見えない〈物語〉
III 「ビックリマン」と天皇制
IV 実録・都市伝説
あとがき
(1)*1送り手は〈物語〉の全容を受け手に示さない。あくまでも〈物語〉を微分化した形で受け手に示す。(略)断片を単純に順序だてていけば一本のストーリーになるという形ではなく、あくまでもストーリーを想起させるあるシチュエーションやキャラクターに関する情報を無秩序に、総和しただけではストーリーが構成できない情報として示すことを「微分化」という。
(2)受け手はこの微分化された情報を手がかりに〈物語〉を再構成するわけだがそれは擬似的な創作である。情報は不完全であるから欠落した部分を含めた全体を与えられた断片を根拠に想像=創造しなくてはならない。
(3)〈物語消費〉に於ける消費の動機付けはこの創造の快楽、〈物語〉を作り出すことへの衝動である。人は他者の作りあげた〈物語〉を一方的に受容するのではなく自らもまた〈物語〉を語りたいと欲している。しかし、無の状態から〈物語〉 を創作するのは一定の才能が必要であり、一般の消費者には不可能である。しかし、〈物語〉の断片が示された時、その枠組み=世界の中で擬似的に〈創作〉を行うことは比較的容易である。
(4)〈物語消費〉とは消費者に擬似的な〈物語〉の〈創作〉を体験させ、その過程もしくは全体が何らかの形で消費行動としての側面を持っている場合をいう。(pp.11-12)
*1:原文では丸囲み数字。