「徂徠豆腐」?

http://d.hatena.ne.jp/potato_gnocchi/20100502/p1


ここで言われていることというのはけっこう単純なことで、みんな自腹を切れよということだと思う。当たり前といえば当たり前のことだ。所謂「ブラック企業」がのさばっているのは一方ではそういう「ブラック」の株式に投資家がよろこんで投資することによっていい株価が付いているからだろう*1。他方では、それとともに消費者がよろこんで「ブラック」の顧客になるからだ。「ブラック」に限らず、企業が最も敏感に反応すべき指標は株価と売上げだろう。換言すれば、株価と売上げが維持されている限り、企業は〈反省〉を動機付けられないことになる*2。売上げという指標に関して言えば、それを動かして企業に〈反省〉を動機付けるためには消費者が自腹を切るしかないということになる。ところで、このエントリーに対する反応を見て感じたのは市場経済に対する信憑性が低下しているのだなということ。消費者の集合的な力としての購買力を武器にして資本の振る舞いを矯めるよりも国家権力の発動、「ブラック企業」への法的規制を求める傾向があるように思う。
それから、「ブラック企業」=低品質ということだが、サーヴィスということについていえば、企業の「ブラック」さがサーヴィスにおける低スキルを作り出すとともに、低スキルの存在を(〈良心的〉な)消費者に許させてしまうという側面がある。低スキルなサーヴィスをdisっても、店も予算かつかつで頑張っているとか従業員も低賃金で頑張っているとか同情されて、disった者が傲慢だとか逆にdisられてしまう*3。視点を換えれば、サーヴィス業の「ブラック」度が低まればそのような情状酌量の余地は狭まるわけだ。また、(〈良心的〉な)消費者もプロとしてのスキルを軽視するということにおいて、「ブラック企業」のオーナーや経営者と同じ立場に立っていないかどうか。

*1:See http://yas-igarashi.cocolog-nifty.com/hibi/2005/03/iii.html http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20071012/1192213501

*2:だからといって、株価や売上げのいい企業が即〈いい企業〉ではないのは勿論であるが。

*3:See http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090814/1250268102