Slices of Life

先週の土曜日はArt Labor*1にて久保田友理子Slice of Life*2のオープニングだった。久保田友理子さんはカナダのトロント在住の日本人アーティスト。
Slices of Life、生の切片、中国語のタイトルでは『生活万象』となっている。ジャンルとしては白黒写真、風景写真というのだろうか。東京、倫敦、釜山、ハノイ等の世界各地で撮影された白黒写真。こういうと、何か凡庸でつまらないやと思われるかも知れない。しかし、Slices of Lifeというシリーズには写真を撮るという振る舞い、さらには私たちの知覚という振る舞いの省察を誘うような仕掛けが作品の中に仕組まれている。〈写真〉に対するメタ・コメンタリー。その仕掛けはどういうものかといえば、同じ写真を2枚重ねて、ナイフで細かい切り込みを入れて(写真のスライス)、上に重ねられた部分を1片おきに削ぎ落としていく。それによって、表面に凸凹ができる*3。また、近づいてみると、重ねられた写真のスライスは奇妙な歪みを持っていることがわかる。写真は生=時間の一片=一瞬を切り取るものだというのは既にクリシェに近いといえるだろう。Slices of Lifeは一片=一瞬としての写真をあらためて切り刻む(切るを切る)という仕草によって、〈写真〉それ自体を提示しているといえる。さらに、その歪みが私たちの視線の運動を誘発することによって、混沌としたヒューレーからノエマとしての光景が構成されるという〈知覚〉それ自体を再体験するということも可能にする。

*1:http://www.artlaborgallery.com/

*2:See http://www.artlinkart.com/cn/exhibition/overview/f2faytrn?x=s&a=ongoing&b=01

*3:最初凹凸のある紙にプリントしたのかと思った。