貴乃花効果か

『毎日』の社説;


社説:外国人力士制限 新解釈は「勇み足」では

 外国出身力士は日本国籍を取得しても引退するまでは「外国人力士」としてカウントする−−。日本相撲協会はこのほど、一つの相撲部屋に所属できる外国人力士を1人だけと制限した02年2月の「申し合わせ」を改めて徹底するよう各部屋に通達し、その中で「外国出身力士」についてこんな新解釈を打ち出した。

 新たな解釈を設けた背景に近年横行する「抜け駆け」があるという。所属する外国出身力士に日本国籍を取らせ、空いた枠に新たな外国人力士を採用するのが「抜け駆け」の手口だ。昨年4月以降、6人の外国出身力士が日本国籍を取得し、空いた枠を使って複数の部屋で新たな外国人力士が採用された。

 規定の抜け道を考えるひまがあるなら、強い日本人力士を育ててほしいと部屋の師匠たちには注文したいところだが、協会執行部としても今回の新解釈で抜け駆け行為に歯止めをかけようとしたのだろう。だが、この新解釈はいささか配慮を欠いた「勇み足」ではないだろうか。

 協会が外国人力士の増加を防ぐため、さまざまな内輪のルールを作るのは自由だ。だが、日本国籍を認めるかどうかは法務省が決めること。正規に日本国籍を取得した日本人に対し、「外国出身」を理由に協会が差別的な扱いをすることが許されるのだろうか。

 数々の乱行がもとで引退に追いやられた元横綱朝青龍や、薬物汚染で相撲界を追われた力士など、ここ数年、外国出身力士の問題が相次いだ。これらは本人以上に師匠や協会の教育の問題であって、外国人力士の増加が直接の問題ではない。

 相撲界は「通訳のいない社会」である。モンゴルだろうが東欧諸国であろうが、相撲を志して入門した外国出身の若者に対し、協会や相撲部屋が通訳をつけたためしはない。外国人力士は必死に日本語を覚え、慣れない日本のしきたりに合わせてけいこに励んでいる。

 短期間で日本語を習得し、日本社会に適応できる力士を数多く育ててきた相撲界のシステムは、実は高く評価されるべきだ。苦労の末、晴れて日本国籍を取得した力士を、出身を理由に差別するなど許されない。

 日本国籍を取得すれば、引退後に親方として相撲界に残ることもできる。今後も国際化の流れが止まりそうにない相撲界に、外国出身の親方の存在は心強いはずだ。外国人力士対策や養成方法も、これまでとは違う新たな視点から知恵が生まれるかもしれないではないか。

 協会が今回の新解釈の及ぼす影響を深く考えて決めたとは思えない。騒ぎが大きく広がらないうちに誤解を招く解釈は撤回した方がいい。
http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/news/20100226k0000m070123000c.html

きわめてまっとうな意見だと思う。
日本相撲協会の「新解釈」を最近の社会全体の排外主義的傾向と関連づけて解釈する意見も散見される。たしかに、同じ国籍の人を「出身を理由に差別する」ということは、ナショナリズムからレイシズムへ一歩踏み出していると言われても仕方がないということは言える。ただ、社説が言うように、「今回の新解釈の及ぼす影響を深く考えて決めたとは思えない」というのが妥当なところなのではないか。
というか、これを聞いたとき、貴乃花親方の理事当選*1の効果なんじゃないかと思った。以前から、貴乃花部屋のポリシーとして知られているのは、外国人や大卒を採らず中卒の新弟子にこだわるということ。貴乃花親方が当選して、角力改革の旗手として持て囃されているのを聞いたとき、これからは「国際化」とかに対してはバックラッシュが起こるんじゃないかと思った。また、次は大卒枠が定められるのかとも思ったのだ。