あちらでは駱駝

日本の宮城県ではカンガルーが出没するらしいという話だが*1、カンガルーの故国、濠太剌利では駱駝が町に襲来。
『スポーツ報知』の記事;


水求めラクダ6000頭が町襲撃…オーストラリア北部


 6000頭のラクダが町で大暴れ―。干ばつ状態が続くオーストラリア北部特別地域(準州)の奥地の町、ドッカーリバーで約1か月間にわたり、野生のラクダ約6000頭が飲み水を求め中心部に侵入、水道管や貯水槽を壊したり、空港滑走路に入り込んだりするなど被害が拡大している。住民はラクダの出没で家を出られない状態が続いており、準州当局は28日までに、ヘリコプターでラクダを町の外に追いやり、射殺する計画を明らかにした。

 オーストラリア北部の小さな町を脅かしているのは、野生のヒトコブラクダだ。北部特別地域のロブ・ナイト準州首相は「6000頭がうろついており、町はラクダに『包囲』されている」と異常事態を語った。

 彼らの要求は「水」だ。人間とは比にならないほど乾きに強いはずのラクダたちも、現地で続く長期的な干ばつには耐えられなかったようだ。水を求めて空港滑走路にも出没、医療搬送などに支障が出ているという。

 現場はアリススプリングスの南西約500キロ、人口は約350人。砂漠地帯の内陸部に差し掛かった小さな町が、思わぬことで注目を浴びることになった。

 もともとオーストラリアにラクダはいなかった。人間に連れてこられたのは1840年代。内陸部の砂漠地域開拓や輸送手段のため、中東、アフガニスタンなどから輸入された。その後、不要になるなどで野生化したラクダは現在100万頭にも。世界一の野生ラクダの生息地となってしまった。馬やロバとともに植物を食べ尽くし、砂漠地域の壊れやすい生態系への影響が懸念されている。

 AFP通信によれば、地元議会は、ラクダ駆除のために追加予算を工面しているが、地元当局は緊急措置が必要だと訴える。地元の放送協会の取材に関係者は、ラクダと面白がって遊びたがる子どもたちがいることや、怖がって家から出られない住民たちがいることを懸念している。

 同国では2007年3月にもラクダの“暴動”に見舞われている。内陸部にある先住民アボリジニの居住区に侵入し、水を求めてトイレ、水道設備などを破壊。沈静化するまで、1週間に約100頭のペースで銃による駆除を行った。

 今回もヘリコプター数機でラクダを町の外に追いやっての射殺計画が進行中だ。だが、自然愛護団体などからは「野蛮だ」との非難の声も。バリケード封鎖などの対処法も議論されている。

 同国ではラクダの観光利用や家畜として中東へ輸出するほか、食肉利用にも本腰を入れ始めた。もともと中国砂漠地帯、中東などではラクダ料理があり、ゼラチン質のすじ肉で串焼きなどにされている。

 オーストラリア産ラクダ肉は、わずかながら日本にも輸入されている。中東などのエスニック料理店で提供されているが、独特のにおいが強く、一般的には日本人の味覚には合わないといわれている。
http://hochi.yomiuri.co.jp/topics/news/20091129-OHT1T00028.htm

「もともと中国砂漠地帯、中東などではラクダ料理があり、ゼラチン質のすじ肉で串焼きなどにされている」。とはいっても、上海のウィグル料理屋では(俺の知っている限りでは)売っているのは羊の串焼きであって、駱駝は食べたことがない。それから、駱駝の瘤って、〈満漢全席〉に入っていたような気がする。南條竹則先生の小説が手許にないので、何とも言うことができないが。ところで、食についての言説には屡々登場する「一般的には日本人の味覚には合わない」というフレーズ、そろそろ何とかしてほしい。
満漢全席 中華料理小説 (集英社文庫)

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濠太剌利というのは英国人が外来の動物を持ち込んで、放して、野生化して、増え過ぎちゃって、さあ困ったぞ、という実験場みたいだな。上の駱駝の話を読んで思い出したのは兎。兎は娯楽(狩猟の標的)用に導入されたが、同様に、野生化して、増えすぎてという経過を辿った。映画『裸足の1500マイル』の原題はRabbit-Proof Fence(兎除けフェンス)。
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