代用麦酒と呼ぶべきだろう

http://katoler.cocolog-nifty.com/marketing/2009/08/post-3fd3.html



現在、急速に売上げを伸ばしているのが、いわゆる「第3のビール」だが、この「第3のビール」というネーミングは、ビールメーカーを大スポンサーにしている大マスコミが、市場を囃し立てるために作りだしたジャンル名であり、あからさまに言ってしまえば、ビールの「まがい物」、フェイク商品のことである。大豆ペプチドやトウモロコシなどを醸造して得られたアルコールにビールエキスと称する<香料>をまぶしただけのシロモノで、こんなものを「ビール」と変わらないと思いながら文句もいわず飲んでいる日本の消費者がつくづく可哀想に思えてくる。世界の中でも最も進んだ消費大国といわれるこの国に暮らして、何の因果でわれわれは、こんな「まがい物」ビールを飲まされなければならないのだろう。

日本の食品・飲料メーカーの香料技術は、人間が感じるありとあらゆる味覚を再現できるまで、高度に進歩しているといわれるが、ビールメーカーが、その技術力をビールまがい商品の開発・製造に向けている現状は、どう考えても市場の「頽廃」としかいいようがない。要するにビール市場が94年に成長から縮退に転じてしまい、苦し紛れの策として生まれてきたのが「発泡酒」や「第3のビール」というジャンルなのであり、そのこと自体が市場の頽廃を体現している。

これは代用麦酒とか擬似麦酒と呼ぶべきなのだろう。「第3のビール」という呼称については、不当表示ということで公正取引委員会が介入するということはないのか。

日本のビールメーカーは、高度成長期には、次々と新製品を投入し、大量のマス広告を展開することで売上げを伸ばしてきた。しかし、成長を止めてしまった国内市場に対して、巨額の広告費を投下して「ナショナルブランド(NB)」を育てる意味は、既にもう喪われている。椅子取りゲームの椅子はもう無くなってしまったのだ。市場がもう成長しないとすれば、ビールメーカーにとっては、現在生き残っているブランドを守ること以外にやるべきことはなくなる。それでも「第3のビール」のような新ジャンルが成長することがあったとしても、その新ジャンルが伸びた分だけ、もともとのビール市場が蚕食されてしまうだけだろう。
「高度成長期」に「次々と新製品」が「投入」されたのかどうかは、当時まだ酒を飲む年齢ではなかったのでわからない。ただ、1980年代では味とかではなく、容器のかたちとかで各社が差異化をしていたことは覚えている。80年代後半になると、朝日がスーパードライを売り出し、他社も追随してドライなるものを出した。村上龍スーパードライのCMに出ていたので、それ以後、彼が酒とかグルメとかについて吐き出す言説は信じなくなった。1990年代に入ると、麒麟がドライに追随したことを反省し、一番搾りを出し、ラガーを強調するようになったとか。
以前にも書いたかも知れないが、日本における麦酒の特徴はその奇妙な閉鎖性だろう。バドワイザーとかハイネケンといったグローバルなブランドも入り込めない。それから、日本人の多くにとって、あくまでも〈取り敢えず麦酒〉なのであって、麦酒のブランドとかに拘る人は多くない。まあ、1980年代前半くらいまでは、酒というのは端的に酔っ払うために飲むものであって、男性が酒のブランドについて嬉しそうに蘊蓄を傾けるなどということは女々しいことだというようなマッチョな雰囲気があったわけだが。勿論、ウィスキーとかコニャックについては例外だったが、こちらの方は単価が高く、ジョニー・ウォーカーとかのブランドの名前を語るということはお値段を語ることを意味していたわけだが。

麦酒については、http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20060725/1153841340 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20061014/1160857182 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20070130/1170172570 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20070524/1180035472 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20070611/1181530709 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20070929/1191047391 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20071012/1192169273 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20080125/1201231607 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20080421/1208716414 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20080520/1211306105 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20060108/1136742476 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20051228/1135783999 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20080729/1217353783 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20080731/1217432392 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20081027/1225126619 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090120/1232388787も。