さぶかる

サブカル」とはゲイ雑誌『さぶ』愛読者に共有されている文化であるというのは嘘で、北島三郎ファンに共有されている文化であるというのも嘘。
さて、


http://d.hatena.ne.jp/usukeimada/20090714/1247578382


曰く、


マンガって、そもそもサブカルなのである。サブカルサブカルチャーというのはハイカルチャーとの対比で初めて存在が明確になる。ハイカルチャーというのは、有り体に言えば古典的な芸術、教養のジャンル。ピエール・ブルデューのいうところの文化資本になるようなものである。その対義語としてのサブカルチャーはだから、大衆文化といえる。例えばテレビ、ラジオ、ポップミュージック、映画(…はハイかサブかが作品によってわかれるところだが原義的にはサブ)、そしてマンガもだ。そもそもマンガ全体が、サブカルチャーのはずなのだ。
日本語の「サブカル」というのは、少なくとも1990年代半ば以降、この人がいう「文化系男子」の文化という意味で使われている。「若者言葉でいうところの「サブカル」とは、もはや原義的なサブカルチャーとは、部分的には相関しながらも、確実にずれてきている」というけれど、それはかなり前からの話だ。さらに、「原義的なサブカルチャー」の「原義」がかなり問題というか、殆ど間違ってるに近いのだが、それは後述。「サブカル」というと、休刊になった『スタジオボイス*1とか、この人が言及している『クイック・ジャパン』という雑誌が半ば自動的に思い浮かぶ。昔買った、『ユリイカ』臨時増刊「オタクvs.サブカル! 1991⇒2005ポップカルチャー全史」*2では、「サブカル」は非「オタク」系ということなので、これも「文化系男子」に近いといえるのでは?さて、英語のsubcultureですけど、一応、

1. A cultural subgroup differentiated by status, ethnic background, residence, religion, or other factors that functionally unify the group and act collectively on each member.
2. One culture of microorganisms derived from another.
http://www.thefreedictionary.com/subculture
ということです。
また、

In sociology, a subculture is a set of people with distinct behavior and beliefs within a larger culture. The essence of a subculture, that distinguishes it from a mere social grouping, is awareness of style and differences in style, in clothing, music or other phenomena.

A culture often contains numerous subcultures. Subcultures incorporate large parts of their mother cultures, but in specific instances they may differ radically. Some subcultures achieve such a status that they acquire a name of their own.
http://www.knowledgerush.com/kr/encyclopedia/Subculture/

こちらの方が詳しいか。日本語では下位文化と訳されてきた筈*3。キモは” within a larger culture”というところ。例えば日本文化といっても、東京文化もあれば関西文化もあれば九州文化もある。男性文化もあれば女性文化もある。子ども文化もあれば老人文化もある。労働者文化もあればブルジョワ文化もある。等々。これらはそれぞれ日本文化の中の「サブカルチャー」ということになる。社会学用語としての「サブカルチャー」というのはこういうものである。
「ハイ・カルチャー」に対立するのはlow cultureということになるのだけれど、通常は侮蔑的・差別的なニュアンスがあるということで、popular cultureと呼ばれる。「ハイ・カルチャー」/「大衆文化(popular culture)」と社会階級との関係については、(米国についての研究ではあるが)Herbert Gans Popular Culture and High Cultureを参照のこと。というか、ガンズのこの本は「サブカルチャー」云々といっている大学院生にとっては必読書の1つではあるのだけれど。ともかく、「ハイ・カルチャー」と「サブカルチャー」は対立しません。別の角度からいえば、「大衆文化」の方が或る社会における共有度が高く、「ハイ・カルチャー」というのは一部エリート階層の「サブカルチャー」であるにすぎない場合が少なからずあるということもできるだろう。また、英語のsubcultureが日本語の「サブカル」になって、今使われているような意味を持ち始めたのが何時頃なのかは重要な問題だと思う。しかし、それはそんな最近の話ではない。
Popular Culture and High Culture: An Analysis and Evaluation Of Taste Revised And Updated

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