ヨガとイスラーム(メモ)

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サウジアラビア

サウジで物議を醸す「ヨガは反宗教行為?」
クーリエ・ジャポン 2009年5月号掲載) 2009年5月19日(火)配信


インドネシアイスラム指導者会議が出したヨガを禁止する宗教見解が、サウジアラビアで波紋を広げている。スポーツ・ジムで行われているヨガは宗教的にどう捉えるべきか?と物議を醸しているのだ。

そもそもヨガは古代からインドに伝わるヒンドゥー教の修行法のひとつだ。だが、あるスポーツ・ジムの関係者は、ジムで行われているヨガは瞑想のためのヨガとは異なるものだ、と主張する。長年、ヨガを続けているナワル・アル・ザハラーニも「ヨガを行うと、元気になって、記憶力が活性化するように感じます。特に家庭でストレスを抱えているときにはとても効果的なんです」と話す。

一方、イスラム法学者のハサン・サファル博士は、どんな理由であっても、ヒンドゥー教の修行のポーズを取ることは許されないと警告する。「こうした行為は全てイスラム教の禁止事項です。宗教見解が出された背景には、たとえスポーツであっても他の宗教の動作を真似ないように呼びかける意図があるのです」

「ヨガ」という名前が悪いという声もある。学生のムハンマド・アル・ハッスーンは「ヒンドゥー教のヨガとは違うのであれば、イスラム教に準じた名前に変えるべきだ」と訴えている。

アル・ハヤト(UK)より
http://news.nifty.com/cs/magazine/detail/cj-20090519-01/1.htm

インドネシアで「ヨガを禁止」のファトワが出たという文脈がわからないのだが。さらに、この記事はインドネシアでのファトワのサウディ・アラビアへの波紋の話。
インドネシアでのファトワは、イスラームヒンドゥーの境界線を再度引き直そうということか。インドネシア(特にジャワ)では過去にヒンドゥーの要素を濃厚に残しながらスムースにイスラーム化が行われた(Cf. eg. 加納啓良『インドネシア繚乱』)。これはインドネシアムスリム内部の引き締めのみならず、インドネシアの国内問題でいえば、例えばジャワとバリの関係にも緊張を加えかねない。
インドネシア繚乱 (文春新書)

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「宗教見解が出された背景には、たとえスポーツであっても他の宗教の動作を真似ないように呼びかける意図があるのです」。ヒンドゥー起源の瑜伽ではなく、スーフィズム儀礼とかを基にしたイスラーム独自の身体技法を開発すればいいんじゃないかとも思ったが、サウディのイスラームワッハーブ派)はスーフィズムの天敵なのであった。スーフィズムについては、その起源において佛教の影響を指摘する説もあるが*1、「他の宗教の動作」ということだと、オスマン帝国の支配階級にして奴隷であったJanisaryの間で信仰されたスーフィズムの一派Bektashisは基督教(東方教会)の儀礼的要素を多く留めていたと言われる(Zachary Karabell People of the Book*2, p.168)。Janisaryの多くはクリスチャンである東欧の農民の息子だが、武官になる場合はイスラームへの形式的な改宗が求められた。
People of the Book

People of the Book

さて、瑜伽発祥の地であり、同時に膨大なムスリム人口を擁する印度でのこのファトワへの反応は如何に?*3
因みに、中国人には瑜伽を印度式気功という人も少なくない*4。印度からの功夫(中国)へのアプローチということだと、Chandni Chowk To Chinaということになるのか。
チャンドニー・チョーク・トゥ・チャイナ [DVD]

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*1:See http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20070927/1190866367

*2:See http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090528/1243479051

*3:印度におけるイスラームについては、http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20060824/1156417435も参照されたい。

*4:以前、真光の手かざしの写真を見せたら、日本人も気功やってるの? と言われたことがある。