「エアコン」問題から建築の話などへ

『読売』の記事;


福岡市立全小中学校にエアコン検討、「我慢も教育」の声も


 福岡市教委は、全市立小中学校への冷暖房(エアコン)設置に向けた検討に入った。文部科学省の学校環境衛生基準は教室の気温について「30度以下が望ましい」としており、今月から、21校の教室に温度計を設置してデータの収集を始めた。

 多くの保護者が設置を望む一方で、学校関係者からは「暑さに耐えるのも大切な教育なのでは」といった戸惑いの声も上がっている。

 「みんな、暑い?」

 吉田宏市長は6日午前、南区・西高宮小の5年4組の授業を視察。市長の呼び掛けに、子どもたちは口々に「暑い」「エアコン欲しい」と答えた。

 この日の教室の気温は30度。市教委やPTAが設置した8台の扇風機がフル稼働しているが、背中や額に汗がにじむ。日差しの強い日などは、教室の中でも40度近くまで上がるといい、同小6年女児の母親(44)は「熱中症予防のため、夏場は水筒を持参させている。子どもの健康のためにもエアコンは必要」と訴える。

 市教委は暑さをやわらげるため、昨年から、すべての教室に扇風機の設置を始めた。5年間で完了する予定だが、保護者からは「扇風機は暑い空気をかき混ぜるだけで、効果はあまりない」といった指摘も出ている。

 市教委によると、18政令市のうち全小中学校にエアコンを設置しているのは京都、さいたま、川崎の3市だけ。北九州市は保健室や校長室などに限って取り付け、千葉、静岡など5市は全く設置していない。

 福岡市は福岡空港や幹線道路の近くにある38校で、騒音対策として設置しているが、215の全小中学校に設置した場合、費用は90億円、光熱費を中心とした管理・運用費は年間2億7000万円が見込まれる。

 西高宮小の視察を終えた吉田市長は「学校が暑いのはよく分かったが、同じ校舎でも(日差しの当たり方などによって)気温が高い教室と低い教室がある。すべての教室に一斉に整備するのは(コスト面などから)現実的ではない」と述べ、収集したデータなどをもとに、教室ごとに必要性を判断する考えを示した。

 同小の中野明校長は「温暖化で夏の暑さが厳しさを増し、自宅や公共施設にエアコンが普及する中、エアコンなしで授業を続けるのは難しい時代なのかもしれない」としながらも、「暑い中でも集中して勉強することで、心の強い子どもに育つと思うのだが」と複雑な胸中を語った。

(2009年7月11日 読売新聞)
http://kyushu.yomiuri.co.jp/local/fukuoka/20090711-OYS1T00328.htm

小学校から大学院に至るまで、学校という場所は「エアコン」とは無縁で、実際、先生も学生も「エアコン」抜きで夏の暑さを凌ぎながら暮らしていた*1。今でも、静岡市千葉市の小中学校では全く「エアコン」はないのか。
さて、結局オチは銭(予算)の問題であるようだが、「エアコン」の有無とか「心の強い子ども」云々とかではなく、学校建築のデザインの問題とかも議論した方が話は面白くなるのでは? 夏の暑さを緩和するためには、建物をすかすかにして、風の流れをよくする、そしてできるだけ日光を遮るということなのだろうけど、日本を含む東亜細亜においては、厄介なことに、夏の暑さの緩和と冬の寒さからの防備を両立させなければならない。ところで、(特に都市部において)夏の暑さが惨いのは、日光の問題もさることながら、コンクリートアスファルトの反射熱のせいでもあるだろう。視覚的にも眩しいし。都市部において学校の校庭の多くはコンクリート化されているが、それをひっ剥がせば、暑さは少しは緩和するのではないか。さらに、校舎の内外に流水を巧く配置すれば、客観的にも主観的にも涼しくなる。あと重要なのは緑。木立は実際に日陰をつくりだすわけだし、枝葉が風に揺れれば、主観的に暑さを緩和する。ただ、こうしたことどもを考慮すると、「エアコン」よりも金がかかってしまうか。

*1:私の大学時代、何故か例外的にコンピュータ室は「エアコン」が利いていた。それから、私の感覚では、大学に「エアコン」が完備されるのと、大学の禁煙化はパラレル。