分業の弊害(メモ)

ビジネス倫理の論じ方

ビジネス倫理の論じ方

編者の方からいただいた『ビジネス倫理の論じ方』*1を読んでいる最中。その中で、第3章の中澤信彦「組織と仕事――誰のために働くのか」(pp.85-117)から少しメモ。
通常アダム・スミスは「分業」を称揚した人として知られる(『国富論』第1編)。しかし、『国富論』第5編においては、「分業の弊害とその対策について詳細に分析している」(p.88)。「分業によって国民大衆の視野は狭くなり武勇の精神と知的能力が衰退する」(ibid.)。中澤氏は「スミスのこうした主張は、これまで少なくない研究者の注目を集め、「スミスの政治学」あるいは「スミス思想の共和主義的側面」として研究が積み重ねられてきている」(ibid.)というものの、一般的に看過されてきたことであり、多くの(私を含めて、経済学史に疎い読者にとっては)新鮮な驚きを喚起するのではないか。

国富論 (1) (中公文庫)

国富論 (1) (中公文庫)

国富論 (3) (中公文庫)

国富論 (3) (中公文庫)

また、社会内分業における「公共財」の概念(pp.91-92)を援用して、組織内の「公共財」供給者として経営者や管理職の職能を論じているのは興味深い(「コミュニケーションの結節点としてのリーダー」――p.103ff.)*2

*1:http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090516/1242408833

*2:社会学者の鈴木栄太郎には「結節機関」論があるが。