People of the Bookを読了

People of the Book

People of the Book

承前*1

月曜日、Zachary Karabellの People of the Book: The Forgotten History of Islam and the West*2を読了する。
詳述する余裕はないので、ざっくり言うと、この本を貫くテーマは、現在イスラームユダヤ教や基督教、或いはイスラーム的中東と西洋というのは不倶戴天の敵のように表象されることが多いけれど、歴史的に見れば、この3つの宗教は色々なことはあったけれど、実際、それなりに1000年以上に亙って共存してきたし、現在も共存しているよね、ということだ。この本では、預言者ムハマンドの時代から、イスラーム支配下の中世イベリア半島バグダッドアッバース朝ビザンティン帝国(中世羅馬帝国)との関係、十字軍、オスマン帝国、さらにイスラエル建国以降まで、中東におけるイスラームユダヤ教と基督教との交渉、緊張を孕んだ共存関係が概観される。本書は、中東の通史として面白いということもあるし、何よりもネオコン的或いはイスラーム原理主義的な言説*3に対する解毒剤として読まれるべきであろう。ところで、著者は(米国人らしく?)〈資本の文明化作用〉を信じており、最後にドバイが将来の希望として肯定的に描かれている。しかし、サブプライムに端を発した金融危機によって、ドバイが惨憺たる状況に突如陥ってしまったというのは、皮肉といえば皮肉。
因みに、http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090403/1238775017でも本書から引用を行っている。

Jonathan SpenceのThe Chan’s Great Continent*4を読み始める。

The Chan's Great Continent: China in Western Minds (Allen Lane History S.)

The Chan's Great Continent: China in Western Minds (Allen Lane History S.)

*1:http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090525/1243218089

*2:See http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20080402/1207155238

*3:この2つは鏡像的な共犯関係にあると言えるし、一般メディアなどのイスラーム表象に対する顕在的・潜在的な影響も強いといえるだろう。

*4:See http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20060509/1147142249