直接話法と間接話法とか

http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090505/1241465472に関して、


http://linguistics.g.hatena.ne.jp/dlit/20090507/1241675217
http://linguistics.g.hatena.ne.jp/optical_frog/20090507/p3
http://d.hatena.ne.jp/alice-2008/20090505/1241529111
http://d.hatena.ne.jp/alice-2008/20090507/1241697122


また、


http://blog.livedoor.jp/spring_beauty/archives/309525.html


さて、山崎紀美子『日本語基礎講座――三上文法入門』の問題なのだが、日本語において直接話法と間接話法の区別は曖昧だよねという議論の文脈で例のI thinkかI don’t thinkかというのが出てきているように思える。たしかに日本語においては、例えばhttp://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090508/1241746028で引用した大江健三郎の文章でも明らかなように、直接話法と間接話法の区別は曖昧というか、そもそもそのような文法的な区別が成立するかどうかが怪しくなってくる。括弧で括れば直接話法といえるかも知れないが、括弧で括るなんていうことは近代以降のことだろうし、そもそも話し言葉では括弧は発音されない。ただ、山崎さんは、


「まさか彼が来る」とは思わなかったよ*1


という例文を挙げている(p.203)。この場合、「まさか彼が来る」という言い切りの文は日本語において非文であるといえる。正しくは、「まさか彼は来ないだろう」(p.204)だろう。これは、日本語の中でも明らかに間接話法に属するものといえ、英語のI don’t think文に対応する。
英語の場合、間接話法でいうためには、代名詞の人称転換と時制の一致が必要だといえるだろう。例えば、


“I want to fuck you,” said she.
She said that she wanted to fuck me.


ただ、thatが省略されて、人称転換も時制の変換も必要ではない場合、間接話法と直接話法の区別は限りなく難しくなるのではないか。


I think “She cannot drive a car.”


と直接話法でいえば、文法的にはOKなわけですよね。まあ、think+否定節というのは或る種の直接話法として許容されるのかなと思いついたのですが。また、


She cannot drive a car, I think.


というのも、直接話法? 英語では、命令文で、例えば、


Kill them, she said.(奴らを殺っておしまい、と彼女は言った)


という言い方はよく行われるのではないか。これを間接話法で表現すれば、to不定詞を使って、例えば、


She told us to kill them.


というふうにしなければならない。

日本語基礎講座―三上文法入門 (ちくま新書)

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*1:ここでの「」は強調の意味であろう。