北海道とハワイとか

http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20090204


北海道が濠太剌利、韓国、中国の観光客に人気で、そのうち北海道は「ハワイ化」するかもという話。『非誠勿擾』*1の話が枕に振られている。東亜細亜における〈北海道ブーム〉は岩井俊二『LOVE LETTER』の韓国でのブレイクに始まったのではないかと思う。その時は小樽だったが。それが札幌へ、さらにその先へと拡がったということだろう。「熊出没注意」というのもあったが*2。ところで、中国語圏の人たちが注目する日本の観光地は北海道だけではない。〈中国では失われた中国を求める〉という最近流行りのテーマに沿って、京都や奈良もブームではある。最近は奈良のキャンペーンが集中的に行われているようだ。

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さて、このエントリーの歴史認識については??という感じがすることもたしかだ。ブックマーク・コメントに曰く、

CrowClaw 先住民族を殺戮して作った植民地なんだからハワイと一緒で当然。今年の札幌では「北方領土返還」の旗が掲げられた市役所の前で共産党が元気に演説をぶっていた。捩れたパトリオティズムが支配する移民の土地なのだ 2009/02/04
http://b.hatena.ne.jp/CrowClaw/20090204#bookmark-11971827

atawi 地方, 経済 呑気な感想は経済的な視線からなんだろうけど、横たわる歴史を足蹴にしているかもしれない可能性に懸念は払ってくべきかもしれない。 2009/02/05
http://b.hatena.ne.jp/atawi/20090205#bookmark-11971827
日本の領土としての北海道がアイヌ・モシリの殖民地化から始まったということはともかくとして*3、「夕張市*4の破綻云々にしても、その背後には国家的なエネルギー政策の転換による石炭産業の衰退ということを考えなければいけない。
ところで、北海道の〈脱−日本〉的な性格というのはその殖民地的(フロンティア的)起源からすれば当たり前なのかも知れない。また、明治以来北海道の開発は米国をモデルにして行われ*5、だからこそ札幌農学校には(少年に大志を抱かせた)クラーク先生が招聘された。林芙美子稚内紀行を読むと、戦前の稚内がとても多文化的な街であったことがわかる。戦後になって、東西冷戦の呷りもあり、北海道は国境を閉ざし、日本国家への一次産品の供給の奉仕をさせられ、さらに政策転換の都合で打ち捨てられたということもいえるのではないだろうか。
林芙美子紀行集 下駄で歩いた巴里 (岩波文庫)

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ハワイについては、山中速人氏の『アロハスピリット』や『ハワイ』くらいしか読んだことはない。現在ハワイを訪れる観光客のなかで日本人が占める割合がどれほどなのかはわからない。しかし、観光地(リゾート)としてのハワイは、フロリダやカリブと同様にそもそもはアメリカ人によってアメリカ人のためにプロデュース・構築されたものである*6。ただ、プレスリーの『ブルー・ハワイ』以降、アメリカにおけるハワイのイメージがどうなっているのかは(〈真珠湾〉のそれを除いては)わからない。日本におけるハワイ幻想では「憧れのハワイ航路」は敗戦直後の歌だったし、映画『フラガール』のテーマである「常磐ハワイアンセンター」も(さらには日本のあちこちに作られた〈ヘルス・センター〉の類も)日本人のハワイ幻想抜きには考えられない*7。一方、重要なことでありながら、リゾートとしてのハワイのイメージの陰であまり語られていないのは、米軍の軍事的要衝としてのハワイという側面。それとともに、ハワイを北海道と比べる際に忘れていけないことは、ハワイが米国でも稀に見るリベラルでマルティカルチュラルな社会を実現しているということだろう。

アロハスピリット―複合文化社会は可能か

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ハワイ (岩波新書)

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ブルー・ハワイ [DVD]

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スヰート檸檬

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