韓国にいたのか

知らなかった。


韓国で活躍中の55歳日本人ミュージシャン
2009年2月4日

55歳日本人と29歳韓国人、そんな不思議な組み合わせの2人組バンド「Hachi&TJ」が、韓国で話題を集めている。

彼らのライブは、とにかく楽しい。終始にこやかな顔を見せるロマンスグレーの紳士、「ハチ」さんの鮮やかな演奏に、釜山出身の好青年「TJ」君の朗らかな歌声が乗れば、ライブハウスは温かな雰囲気に包まれる。演奏は基本的に二人だけで打ち込みは使わず、ギター、ベース、ドラム、ウクレレ、ケンガリ(小型のシンバルに似た韓国の打楽器)など多彩な楽器が登場。おもしろいほど幅広いサウンドが飛び出し、観客を決して飽きさせない。
ファンは年齢層も様々で、演歌テイストたっぷりのポップナンバー『チャンサハジャ(商売しよう)』が始まれば、老若男女の観客がそれぞれのやり方で踊りだす。その様子は、まさに村のお祭りだ。

韓国では「ハチ」の愛称で知られているミュージシャン、春日“Hachi”博文さん。現在はソウルに住み、韓国での音楽活動をメインとしているが、彼こそは知る人ぞ知るベテランミュージシャンである。
彼のキャリアは1972年、若干18歳の時に結成した「カルメン・マキ&OZ」で華々しくスタートする。ジャニス・ジョプリンに負けない豪快なボーカルを、重厚なギターサウンドで支えたのが、バンドリーダーである彼だった。解散までの5年間に発表された3枚のアルバムは、黎明期の和製ロックという枠を越え、現在でも色あせない輝きを放っている。

解散後はソロギタリストとして活動。またプロデューサーとして、仲井戸麗市RCサクセション、後にソウル・フラワー・ユニオンといった実力派ミュージシャンのアルバムで腕を振るうように。後期RCサクセションではドラマーとしても参加している。

そんな彼を韓国へと向かわせたのが、韓国の伝統楽器・ケンガリだ。33歳の時、ケンガリの音色に魅せられた彼は、本格的に勉強するために渡韓。無形文化財チェ・ウンチャンを師として学んだ。日本に戻った後は「東京ビビンバクラブ」という名の日韓ミクスチャーバンドを結成するに至る。

その後も韓国にたびたび通いながら、韓国人ミュージシャンと交流を深めていく。カンサネ、ソ・ウヨン、チョン・イングォンといったミュージシャンのプロデュースにおいても才能を遺憾なく発揮した。

彼を慕うミュージシャンも多く、韓国でカリスマ的な人気を誇るロッカー・カンサネもそのひとり。最新アルバムで「サスガカスガ」という日本語の歌を彼に捧げているほどだ。
「韓国はなぜか肌が合うんですよね」とおっとりした口調で話す春日さん。2003年に、アマチュアミュージシャンだった釜山の青年、TJ(チョ・テジュン)を発掘し、韓国でHachi&TJを結成。2006年、52歳の年に韓国に定住し、ミュージシャンたちのプロデュース業や、自分のバンドのプロモーションにと、忙しく活動している。
Hachi&TJは現在、2枚目のアルバム発売を控えているということだ。

春日さんは韓国の印象について、「ファンキーな国。屋根がない野外ステージを用意して、『雨は降りませんから』って言うんですよ。良くも悪くも、そういうところがおもしろい」と明るく話す。
また以前、ライブを終えた春日さんが、打ち上げの席でギターを弾き出し、周囲の韓国人を巻き込んで楽しく歌いながら、「僕はこれがやりたかった。日本のミュージシャンは何故か、打ち上げで楽器を弾かないんだよね」と言っていたのが印象的だった。彼にとって韓国は、出会うべきして出会った場所なのだろう。

Hachi&TJのアルバムを聞いて耳に残るのが、曲自体の持つ心地よさだ。聴きやすいメロディーに、ここぞというところでバシッと決まる伴奏。壮大な曲もバランスの良いアレンジで聴かせることを得意とした、カルメン・マキ&OZで出発した春日さんにとって、韓国で生まれた円熟した楽曲の数々は、ひとつの到達点といえる。
彼らを知らしめた代表曲『チャンサハジャ』は、インターネットを通して視聴可能だ。ちなみに、忌野清志郎のボーカルがワンフレーズだけ収録されているというお楽しみつきなので、探してみても面白い。

現在は、初めて自身がボーカルをとるソロアルバムの製作に余念がない春日さん。国境を越えた活動で、味わいを増していく彼の音楽は、これからも多くの人のもとに届くことだろう。
(清水2000)
http://www.excite.co.jp/News/bit/E1233548204326.html

ところで、「カルメン・マキ&OZ」は「3枚のアルバム」のほかに2枚組のライヴ・アルバムあり。