『葉問』など

春節期間中、北海の妻の実家で、何本か映画のDVDを観た。
先ずは、葉偉信(Wilson Yip )*1の『葉問(Yip Man)』*2。アクション監督(動作指導)は洪金宝。李小龍(Bruce Lee)の師匠として知られる武術家・葉問*3の前半生を描く。映画は大まかに前半と後半に分けられる。甄子丹(Donnie Yen)*4が演じる葉問は広東省佛山の人。1930年代の佛山は武術が盛んで、幾つもの流派が道場を構えている。葉問は武術の達人でありながら、道場も構えず、広い洋館に妻子と静かに暮らしている。前半の中心は北方から佛山に道場荒らしにやってきた金山找(樊少皇)の挑戦を葉問が退けるエピソード。雅な南方と粗野な北方という対立。後半では、日本軍が佛山を占領し、葉問の邸宅は日本軍司令部として接収され、家を失った葉問は石炭工場の労働者となる。池内博之*5演じる日本軍司令官の三浦は自身も空手の達人で、地元の武術家との対決を望む。賞品の白米に釣られた中国人は次々と三浦に敗れていく。そして、葉問は中国人の誇りを守るために三浦と対決し、打ち破る。興味深いことは、この映画の主要な日本人の登場人物は三浦とその副官である「佐藤」だけど、三浦は(敵ながら)武術家としての節操のある人物として描かれているのだが、佐藤の方はまさに日本帝国主義が服を着て歩いているというキャラクター設定になっている。また、空手はその僅か10数年前にはまだ非日本的(琉球的)だった筈なのに*6、ここでは〈日本精神〉を代表するものとなっている。ここら辺の事情、また武術と抗日/中国ナショナリズムとの関係については、村井さんの御教示をお願いしたいところ。
さて、前半は昼寝していたので観なかったのだけれど、陳凱歌『梅蘭芳*7の後半部を観た。紐育公演の成功というエピソードを挟んで、後半の背景は日中戦争梅蘭芳(黎明)は抗日のため、日本傀儡政権下での公演のボイコットを宣言する。梅蘭芳の公演を実現しようとする安藤政信演ずる京劇ファンの日本軍将校・中田と梅蘭芳の対決が物語の焦点となる。京劇を征服しない限り「支那」征服はあり得ない。ここでも『葉問』と同じ構図が見られる。また、日本人のキャラクター設定も、『葉問』の三浦と佐藤のペアは、京劇及び中国文化をリスペクトする中田とそのまんま軍国主義者の中田の上官というペアとして再現されている。
これもお正月映画である馮小剛『非誠勿擾』*8は、主人公の秦奮(葛優)のお見合いを巡るラヴ・コメディ。後半、秦奮と梁笑笑(舒淇)が北海道旅行をする。
というわけで、2008年後半の中国映画は日本絡みが多い。
日本と言えば、呉宇森(John Woo)の『赤壁』(上下)で、中村獅童演ずる甘寧は、20世紀の日本に転生すれば、『硫黄島からの手紙*9の伊藤大尉になるんだと納得。

硫黄島からの手紙 [DVD]

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