承前*1
坂本玄樹「【現代思想とメディア 3】終りなき「脱―構築」」『慶應塾生新聞』2009年1月号http://www.jukushin.com/archives/2474
Econthoughtさんに教えてもらった。
斎藤慶典氏*2へのインタヴュー。取り敢えず、少し切り取っておく;
齋藤さんの『デリダ なぜ「脱−構築」は正義なのか』、買ってはあるのだが*3、まだ読んでいない。それから、ずっとお名前をケーテンと音読みでお呼びしていたことに気づく。
― デリダの「脱― 構築」(De0-construction)について。
「脱―構築」は物事に「本質や根拠がある」「絶対的な見方がある」とする考え方への抵抗で、その性質上「脱―構築」自体は何らかの定義や本質や根拠を持ちません。ある対象の本質を定義するということは、対象が理解可能であることを前提とします。「ライオンはその見かけほど怖いものではない」と知れば我々は安心できますが、それはそう理解することで相手を「自分が対処できる範囲内に位置づけられる」からで、これは一種のエゴイズムです。「私は○○である」というように同一性をもった理性的な自己があることを前提として語るのも本質規定の一つであり、「脱―構築」の対象になります。何かを「脱―構築」する主体は、いわゆる理性的主体ではないわけです。―「脱―構築」の場では「正義」ということが念頭におかれています。
脱―構築において、「絶対に可能だ」と言い切る根拠はない点に注意してほしいのですが、その上で正義や善が可能だとすれば、それは「他者のために」ということではないか。本質規定することで他者に対する「認識の暴力」が働いている可能性があるのなら、理性に基づき本質を把握する特定の仕方を回避せねばなりません。これが「脱―構築」の「解体」という側面です。
でも、理解を拒否し解体するだけでは、「無理解の闇の中」で更に深刻な暴力が行使されかねません。解体しながらも自分が関わっている他者と向かい合うためには、少しでも「よりよい=より他者のためになる」別の理解を提示(構築)しなければなりません。しかし「絶対に正しい理解」があるわけではありませんから、解体と構築に終わりはないのです。「脱―構築」と相対主義を区別するのはこの点です。
デリダ―なぜ「脱‐構築」は正義なのか (シリーズ・哲学のエッセンス)
- 作者: 斎藤慶典
- 出版社/メーカー: 日本放送出版協会
- 発売日: 2006/09
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*2:See also http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20080308/1204949369 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20080331/1206966495 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20080422/1208894806 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20080423/1208950704 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20080425/1209091909