Karen Armstrong The Battle for God

The Battle for God: A History of Fundamentalism (Ballantine Reader's Circle)

The Battle for God: A History of Fundamentalism (Ballantine Reader's Circle)

既に何度か引用している*1Karen ArmstrongのThe Battle for God: A History of Fundamentalisms*2、最近読了したので、少しメモしておく。


A New Preface
Introduction


Part One: The Old World and The New
1. Jews: The Precursors(1492-1700)
2. Muslims: The Conservative Spirit(1492-1799)
3. Christians: Brave New World(1492-1870)
4. Jew and Muslims Modernize(1700-1870)


Part Two: Fundamentalism
5. Battle Lines(1870-1900)
6. Fundamentals(1900-25)
7. Counterculture(1925-60)
8. Mobilization(1960-74)
9. The Offensive(1974-79)
10. Defeat? (1979-99)


Afterword
Glossary
Notes
Bibliography
Acknowledgement
Index


A Reader’s Guide
A Conversation with Karen Armstrong(Jonathan Kirsch)
Reading Group Questions and Topics for Discussion

ユダヤ教イスラーム、基督教という中東に発し、聖書に関わる3つの宗教的伝統における「原理主義」を並行的に叙述する。但し、イスラーム埃及とイラン、基督教は米国に対象が限定されている。本書の基本的なスタンスは「原理主義」とは〈近代〉という事態(特に「世俗主義(secularism)」の勃興)に対するスピリチュアルな(それも、近代的に些か歪められたかたちでの)応答であるというものである。本書を貫く対立は、宗教的なものと世俗的なもののほかに、伝統社会と近代社会、またmythosとlogos*3の対立である。
1492年の西班牙におけるレコンキスタから始まる第1部は、それぞれの宗教的伝統における「原理主義」の土壌/前提としての伝統社会から近代社会への変動を描く。20世紀を舞台とする第2部が本格的な「原理主義の歴史」ということになる。私自身にとっては、特にユダヤ教における「原理主義」の流れについての叙述が勉強になった。
本書の特色は著者の博識とともに、そのバランス感覚であろう。彼女は基本的に宗教的な人であり、宗教を時代遅れなものとして排斥する反宗教主義者ではないし、また〈近代〉それ自体を良きものとして崇拝する単純な近代主義者でもない。さらに、「原理主義」を一方的・先験的に悪、アナクロな妄想・妄動として片付けるのではなく*4、「原理主義」自体が近代的なものであることが指摘され、それが批判されるのも、「原理主義」がそれぞれの宗教的伝統において培われてきた(私たちのスピリチュアリティにとって有益な)最良の徳を損なってしまうことにおいてである。また、中東のイスラーム主義については、外部(列強)によって帝国主義的・殖民地主義的に押し付けられた〈近代〉を自前のものとして再構築しようとする運動の側面があることも指摘されている。
現在、たしかに政治や経済或いは軍事の領域でも再び宗教的なものが世界的にせり出しているといえる。また、そのような論評も多い。しかし、それらの多くで看過されているのは宗教性、或いはスピリチュアリティの問題なのである。その意味でも、本書は、ユダヤが云々とかイスラームが云々とか口に出す手前で、(英語が読める人ならば)繙いてみる必要がある本なのである。
本書の結びの言葉を引用してみる;

Secularists and fundamentalists sometimes seem trapped in an escalating spiral of hostility and recrimination. If fundamentalists must evolve a more compassionate assessment of their enemies in order to be true to their religious traditions, secularists must also be more faithful to the benevolence, tolerance, and respect for humanity wich characterizes modern culture at its best, and address themselves more emphatically to the fears, anxieties, and needs which so many of their fundamentalist neighbors experience but which no society can safely ignore. (p.371)