莫曉然「豆腐宴下免恩怨」『O2』2008年9月号、pp.108-109
既に先月の話であるが、9月15日は「中国豆腐文化節」、つまり豆腐の日。上の記事によると、豆腐発祥の地は江蘇省淮安*1であり、9月15日が豆腐の日であるというのは豆腐を発明させた淮南王劉安の誕生日に因むという。
中国では早くから「豆乳」が製造されており、豆乳を放置しておくと凝固することも知られていたが、食用とはされていなかった。漢高祖(劉邦)の孫である淮南王劉安が或る時各地から方士を召集し、「煉丹」をさせていて、誰かが偶々豆乳に「石膏或塩類」を投入したところ、忽ち豆乳は凝固した。これが豆腐の起源である。その場所は、8人の方士が集ったところから、今では「八公山」と呼ばれている*2。そもそも最初は、あくまでも〈薬〉として食されていたわけだ。
「豆腐」という呼び方は北宋以後。それまでは、「菽乳」とか「甘脂」と呼ばれていた。「菽」は大豆の古称で、英語のsoyはこれに由来するという*3。
また、豆腐の薬効について取り敢えずメモしておく;
奴豆腐といえば、日本では醤油+生姜+鰹節だが、中国では胡麻油が好まれる。ところで、上海を含む江南地方では豆腐は葬式の客に出す料理であり、お客様に豆腐を出すのは礼を失するとされる。以前、京都で中国人を湯豆腐に案内したことがあったが、上海人ではなかったので、まあよかったか。
《本草求真》:豆腐、其性非温。故書皆載味甘而咸、気寒無毒、而謂寒能動気。至運能和脾胃、正是火去熱除以安和之語。可去垢、清徳。《食鑑本草》中也有類似説法、説豆腐寛中益気、和脾胃、下大腸濁、消腸満。(p.109)
淮南王劉安は多くの食客を集めて『淮南子』を編纂させた人物ということで、金谷治『淮南子の思想』をマークしておく。また、清代の豆腐料理を10数種載せている袁牧『随園食単』も。

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*1:周恩来の生地でもある。See also http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20080306/1204804366
*2:8人と劉安はこの場所で昇天したとも。
*3:現在のマンダリンの読みでは、shu。