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王家衛の『旺角卡門』を先日観た。先ず何よりも、劉徳華も張学友も張曼玉もとにかく若い。既に20年前なので当たり前か。この映画は2つの物語が絡み合っている。一つは劉徳華と張曼玉のラヴ・ストーリー。もう一つは劉徳華と張学友の物語。劉徳華*1は14歳で人殺しをして以来の極道暮らし。張学友はその弟分。この張学友のキャラクター設定というのは臆病で弱い癖にいきがることだけは一人前。当然、やくざのくせに非モテ。つまりはどうしようもない最低な野郎。ただ、この最低さは(日本語タイトルにあるように)「いますぐ抱きしめ」たくなる程愛おしい。多分、それは兄貴分の劉徳華にとってもそうなのだろう。劉徳華も喧嘩は強いが、その活躍の殆どは張学友のしでかした不始末の尻拭いである。そのうだつの上がらなさに呆れて、女も(わざわざ劉徳華の子を中絶して)逃げてしまう。張学友は男を上げるために、警察の保護下にある組の裏切り者を殺す鉄砲玉に志願する。劉徳華は張曼玉と結ばれて新しい暮らしが始まりかけるが、それを聞いて、張学友を引き留めようとするが、彼のヒーローになろうとする欲望を撤回させることはできず、結局張学友の仕事を見守り、また彼の尻拭いをして裏切り者は殺すが、自分も警察に射殺されてしまう。
王家衛は(後の映画でもそうだが)殆ど俯瞰的なシーンを撮らないので、映画を観ていて感じるのは先ず圧倒的な圧迫感だ。また、印象が強いのは、火鍋屋を襲撃するシーンのサム・ペキンパー風のスロー・モーションか。音楽では、張曼玉の内面を表出するためにフィーチャーされた、林憶蓮(Sandy Lam)による『トップ・ガン』のテーマ、”Take My Breath Away”の広東語カヴァー「激情」はけっこうぐっと来る。
ところで、王家衛の後の映画では、香港/外部という対立が設定されているのが多い。例えば、
香港/フィリピン(『欲望の翼』)
香港/カンボディア(アンコール・ワット)(『花様年華』)
また、『重慶森林』の香港/カリフォルニアという対立もそれに入れていいか。この映画では、この対立の原型として、旺角(九龍)/大嶼山という対立が設定されている。大嶼山の森の木が風に揺れるショットは印象的。勿論、現在大嶼山は空港やディズニー・ランドがあり、香港の外部とは全く言えないが。
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旺角はこういう映画の舞台になって、怖そうな感じがするが、実際1990年代の前半頃はそうだったのだが、現在はオタクの街ともいえるし*3、また歩いてみて気づくのは古本屋が多いこと。その古本屋の多くは卒業して使わなくなった中等教育の教科書の下取りを主な商売にしている。
See also http://d.hatena.ne.jp/frenchballoon/20060610#1149956766
*1:この映画では、その後の王家衛の映画の幾つかがそうであるように、役者の名前がそのまま役名になっている。劉徳華は「阿華」、張学友は「阿友」。
*2:See http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20070624/1182702293
*3:See also http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20080710/1215616507