偶然について引用2つ

承前*1

先ずは、堀江敏幸『河岸忘日抄』*2から;


(前略)『イソップものがたり』で読んだんだけど、話していい? もちろん、と彼は椅子に座りなおして少女の眼を見つめた。あのね、狩りが好きでとても勇敢な息子が、ライオンに食べられちゃう夢を見たお父さんが、ほんとに食べられたらいけないと心配して、頑丈な塔を建てて、そのうえに息子を閉じこめるの、外の世界に出なくてすむようにって。そして息子の好きな動物の絵をたくさん描かせたの。ライオンの絵もあったのよ。ある日、退屈でしかたないから、ライオンめ、おまえのせいでぼくは外に出られないんだ、って怒った息子が絵をぱんとたたいたら、その下に出ていた釘が爪のあいだに刺さって、ばい菌が入って、それがもとで死んじゃうの。(後略)(p.19)
河岸忘日抄 (新潮文庫)

河岸忘日抄 (新潮文庫)

次はアラニス・モリセットの”Ironic”;


http://www.azlyrics.com/lyrics/alanismorissette/ironic.html
アイロニーというのは事後的な認識の準位に属するのであって、行為の準位、出来事の準位ではたんなる偶然性なのだろう。
Jagged Little Pill

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