http://d.hatena.ne.jp/trivial/20080726/1217005293
これを読んで、加藤秀一『〈恋愛結婚〉は何をもたらしたか』の以下の一節を思い出した。
勿論、加藤氏は石原慎太郎だけを責めているのではない。石原に批判的である『朝日新聞』も「DNA」という言葉を濫用していることを様々な例を引いて、示している(pp.229-230)。そして、その「レトリック上の効果は「日本人」というカテゴリーの〈生物学化〉である」(p.230)と言っている。
結婚しない人間は不幸だと言い放った石原慎太郎が、他方ではDNAという言葉を好んで振り回していることはきわめて象徴的だ。靖国参拝は「日本人の精神性、文化のコアにあるDNAに触れてくる問題」だとして首相の靖国神社参拝を正当化し、「日本人は英知に満ちた民族なのです。しかも早くから教育の水準は世界屈指だったから、その英知がDNAにプリントされてきている」と自画自賛する。極めつけは、中国人による凶悪犯罪が増えていることを憂いながら、「こうした民族的DNAを表示するような犯罪が蔓延することで日本社会全体の資質が変えられていく」という差別発言だろう。
これらの発言は、石原が遺伝学について完全に無知であること、そしてそれに気づくこともなく、したがって恥ずかしいという感覚もないこと、要するに科学的思考がまったく欠落していることを示している(DNAは教育によって書き換えられたりしないし、「民族」という文化的概念とも無関係である)。(後略)(pp.228-229)
- 作者: 加藤秀一
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2004/08/06
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