「図書館向きでなかった」本など

図書館問題については、http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20060412/1144854960http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20060730/1154283564http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20060827/1156688192http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20060925/1159191532http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20061106/1162827266http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20061230/1167500322http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20070112/1168605677http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20070114/1168762895http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20070209/1171041204http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20070323/1174650246http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20071027/1193504573で言及したことがある。
『朝日』の記事;


財政難図書館、不要本に埋まる 寄贈募るが多くは廃棄

2008年7月14日6時31分


公立図書館がジレンマに陥っている。財政難のため最近は、貸し出し希望が多いベストセラー本も多数は購入できない。そこで市民から寄贈を募っているが、持ち込まれるのは引っ越しなどで不要になった本が多く、そのまま廃棄されるケースが多いのだ。関係者からは「図書館が本の処分場になっている」との嘆きも聞かれる。

 「引き取りは遠慮させてもらうかもしれません」

 甲府市の市立図書館の男性職員は、80代の女性宅を訪ねてそう説明した。本棚には、亡き夫の「形見」の本が200冊以上。「もったいなくて捨てられない」と寄贈の申し出を受けたが、引き取ったのは50冊だけだった。「専門的な教育本などが多く、図書館向きでなかった」という。

 同図書館が本の寄贈を広く市民に呼びかけ始めたのは、昨年7月。この1年間に数千冊の寄贈の申し出があったが、蔵書になったのは約千冊にとどまった。

 千葉県の市川市中央図書館には昨年度、約3万冊が持ち込まれた。そのうち蔵書になったのは約6千冊。その他の2万4千冊の大半はリサイクル市に提供し、一部は廃棄した。「寄贈のピークは3〜5月。引っ越しシーズンなんです」と担当者は話す。

 処分されるのは、汚れや傷みが目立つ本。専門書や事典、マンガも多いという。

 公立図書館が本の寄贈を募る背景には、自治体の財政難がある。日本図書館協会によると、公立図書館1館あたりの本などの購入費は、ピークだった93年度の1617万円から07年度は1020万円に。「予算が減って、5、6年前から寄贈を募る図書館が増えた」(事務局)という。

 特に集めたいのが、貸し出し希望の多いベストセラー本。経営の効率化が進む図書館では購入図書も厳しく精査され、同じ本は何十冊も買えないからだ。
http://www.asahi.com/national/update/0712/TKY200807120078.html

神奈川県秦野市の市立図書館は「貸し出し予約が集中している本を寄贈いただけると助かります」と昨年12月からホームページで呼びかけている。07年度の本・CDなどの購入予算は2162万円で、03年度の3463万円から4割近く減少。ここ数年は、「どんなに人気がある本でも、同じ本の購入は10冊程度まで」と徹底されている。

 同図書館の「予約ベスト10」(11日現在)をみると、「ホームレス中学生」(田村裕著)は、所蔵11冊に対し予約137人。「流星の絆(きずな)」(東野圭吾著)は、所蔵10冊に予約130人。借りるまでに半年かかる本もあるという。だが、こうした人気がある本の寄贈は「残念ながら少ない」と担当者はいう。

 なぜなのか。ある図書館の職員は「本を寄贈する人は本が好き。捨てることに罪悪感があるから、読まない本を図書館に持ってくる」とみる。別の図書館職員も「図書館が本を捨てるのを代行しているようなもの」と嘆く。

 ただ、寄贈された本を蔵書にするには、分類や表紙のカバー加工が1冊ずつ必要になる。公立図書館は職員減も進んで「これ以上、業務は増やせない」(ある図書館職員)ため、蔵書にする作業が追いつかず、倉庫に山積みにしたままの本も多いという。(高野裕介)
http://www.asahi.com/national/update/0712/TKY200807120078_01.html

以前、2005年の「活字文化法案」問題の際に、作家の三田誠広とかがごにょごにょいっていたのをかなり??な感じで読んでいたりもしたのだが、上の『朝日』の記事を読んだ上だと、けっこう理があるんじゃないかとも思ったりする。http://blog.livedoor.jp/saihan/archives/28191378.htmlから孫引きすると、

三田誠広]ひとつは推理作家協会が提唱している「発売後6カ月間は貸出を猶予してほしい」という要求。ふたつめは短期間には売れないが息長く売れていく本に対して、公貸権という概念のもとに国家補償による基金を設立すべきだという問題。そして3つめは、少部数でも良い本をきちんと揃えるためには図書館の予算が少なすぎるという問題。現状は日本の文芸文化そのものの危機であり、出版社や作家も含めて図書館の予算を増やす運動を起こすべきではないか。

大沢在昌]推理作家協会では7月に会員にアンケートを実施した。ひとつはレンタルブック店に対して貸与権を確立させてカセをかけていくという問題。もうひとつは図書館に対して発売後6カ月間の貸出猶予期間を設けてほしいという問題で、現在意見をまとめているところだ。作家と出版社、図書館は本来運命共同体であり、公貸権も含めて協力していければよいと思う。

弘兼憲史] 図書館というのは本来書店で売っている本を大量に購入して見せるところではなくて、書店では簡単に手に入りにくいもの、例えば学術書とか専門書とか、そういうものを置いて見せる場所であろう、そういうふうに位置付けたいと私は思います。したがって現在の貸し出し中心主義を、もっと住民の勉学やビジネスの一助になるような立場を貫いていく方にプライオリティーを置いていただきたい。

猪瀬直樹] 著者や出版社が図書館に期待しているのは、一種の基礎票みたいなものなんです。1万冊本を出すと図書館で千冊、2千冊買ってくれるんじゃないか、と。ですから同じ本を100冊買うのでなく99冊違う本を買ってほしい。そうなれば著作者も図書館も万々歳となるんです。
特に弘兼憲史猪瀬直樹はかなりまともなことを言っているんじゃないかと思うのだが、このエントリーには、図書館員側の反論も引用されているのだが、その中で「複本」問題に関しては、

沢辺……ところで、蔵書における複本の比率ってどのくらいなんですか?
堀……タイトル数ね。
沢辺……いや、タイトル数と、それから……。
小形……出してみたことはないけど、練馬の場合、毎週百タイトルぐらい本を買うとして、最終的に複本になるものは一タイトルか二タイトル程度だと思うんですよ。
沢辺……そういうことが聞きたかったんです。だって、この批難の勢いだと、図書館は複本ばっかりそろえてて、ほかの本は買ってないじゃないかって気がする、極論だけど。
堀……図書館の入れるべき本の多様性を切り捨ててでも、いわば貸出の営業成績を上げるように経営的にも流れてるんではないかとかという誤解もあるだろうけれども、そこまでして貸出を伸ばそうとしている図書館はたぶんないだろうと思うんですよね。
とある。しかしながら、上に掲げた『朝日』の記事を信じるとすると、既に説得力がないだろう。
See also http://blog.goo.ne.jp/rebellion_2006/e/d5181ad1131775f2e0281a200b6436d0