毛沢東と「ポジティブ教」

http://d.hatena.ne.jp/PledgeCrew/20080331http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20080401/1207022516とも関連するが、毛沢東を〈農本主義者〉として捉えるのは果たして妥当なのか。勿論、そのような毛沢東像の影響が強かったことは否定できないだろうが。毛沢東にはその反面過激な工業化主義者としての一面がある。1950年代末の〈大躍進運動〉。10年で英国に追いつくとか宣言して、天候不順による大飢饉とも相俟って、結果としては多分文化大革命以上の悲惨を中国に齎した。ところで、李澤厚氏は「当年為了現代化、毛号召不怕鬼、不信神、要発揚人的能動性、一年大躍進便造成了数千万的死亡、樹木水土的厳重毀壊」(「“説巫史伝統”補」 in 『歴史本体論・己卯五説(増訂本)』*1生活・読書・新知三聯書店、2006、p.407)と述べ、「殷鑑不遠、必需注意」と付け加えている。李氏は中国の「天道」思想の特徴を述べる中で、その最近の一例として毛沢東に言及しているのだが、「天道」思想には「人的主体性和主動性的直接発揚」(p.405)があるという。伝統思想との関係についてはともかく、毛沢東思想の特徴にはあっけらかんとした〈主体=主観主義〉があることは事実で、そこに例えば端っから主体性を無視して歴史的法則やら必然性やらを押し付けてくるだけのスターリン主義とは違った〈魅力〉があり、特有の危険性があった(ある)といえるだろう。ということで、毛沢東思想の魅力と危険性は〈農本主義〉よりも昨今流行らしい「ポジティブ教*2に近いところがあるといえるだろう。