「削除要請」

東京新聞』(共同配信)の記事;


郷土史、異例の削除要請 図書館に「差別助長」と

2008年1月13日 17時23分

 島根県安来市の「安来市誌」(1970年発行)と合併前の「伯太町史」(62年発行)に差別を助長する部分があったとして、安来市が県内の公立図書館に、この2冊を所蔵している場合、当該ページを切り取って市に送付するよう求めていたことが13日分かった。

 差別表現などを理由に自治体が図書館に、ぺージの削除を要請するのは異例。

 安来市人権施策推進課によると、該当部分に被差別地区の地名などが記載されていることが分かったための措置。「削除の要請はしたが、具体的な判断は図書館側に委ねた。ページの抹消を求めたのは適切ではなかった」としている。要請を受けた個別の図書館の対応は「明らかにできない」としている。

 要請文書は昨年11月29日付。偏見や差別を温存・助長する要因となる個所があるとして、安来市誌は1カ所4ページ、伯太町史は2カ所計8ページについて「抹消(ページごと除却)/除却されたページは同封した返信用封筒で返送してください」と求めている。
(共同)
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2008011301000203.html

安来市の挙措を支持することはできない。しかし、この〈暴挙〉の動機は理解できる。『部落地名総鑑』のように悪用されることを危惧したということは推察できるからだ。一般に差別的とされる表現があった場合は、それが如何なる理由で差別的なのかを解説したサブテクストを付すのが妥当な措置であろう。しかし、この場合は「被差別地区の地名などが記載されている」。これによって、現実世界及びネット世界に蔓延る差別主義者どもに付入る隙を与えてしまったということはある。また、他方、問題の箇所を「削除」してしまうことは、差別が存在していた(いる)という歴史を抹消してしまうことになるのではないかとも思うのだ。この場合、穏便で妥当な措置としては、アカデミックな目的を除く一般の閲覧を取敢えず停止するということか。