「蛮族」

『読売』の記事なり;


アイヌの血を引く蛮族」民主・山岡氏が発言


 民主党山岡賢次国会対策委員長は31日、国会内で自民党の大島国対委員長と会談した際に、「私らはアイヌの血を引く蛮族だ」と述べた。

 会談終了後の記者会見で山岡氏は、「誤解を与えるとすれば、申し訳ない。その言葉を取り消す」と陳謝し、発言を撤回した。

 山岡氏の発言は、自民、民主両党の国対委員長会談の冒頭で、同席した安住淳民主党国対委員長代理が色白であることが話題になった際に飛び出した。

 山岡氏は記者会見で「冗談だ。差別につながるような言葉は取り消したい。私は、栃木県真岡市に住んでいる。真岡という言葉はもともとアイヌ語だ。誇りに思い、代表として言っていると解釈していただきたい」と釈明した。アイヌ民族に関する自らの認識については、「日本の先住民族だ。同じ日本人であるということで、特に(差別的に)意識をしたことはない」と語った。

(2007年10月31日18時48分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20071031i411.htm

差別された者が敢えて自らが押し付けられた差別的な呼称を自称として使用する場合はあるだろう。そうでない者もそのような呼称を自称することによって、差別された者へ同一化する場合もあろう。この場合は後者に属するのだろうか。ところで、理念的な華夷秩序において、自らを「蛮族」と称することの意味には重いものがある。春秋戦国の強国に楚というのがあった。楚は周に対して、自らを夷と称し、服属を拒んだ。かように、自らを文明的な秩序から外れた「蛮族」として自称することは、その文明的な秩序を押し付ける(従って、差別的な境遇を押し付ける)中心に対する服属を拒み、その法の外での独立を宣言するに等しいところがある*1。だからこそ、「誇りに思い、代表として言っていると解釈していただきたい」なら、「冗談だ」とは言わないでほしいとは思う。また、差別的な呼称を「冗談」で玩ぶことができるのは、或る意味で差別されたものの特権ではある。
「真岡」が「もともとアイヌ語」ということは初めて知る。東日本とアイヌ語の結びつきは谷という漢字を(鎌倉ではやつ)と読むことに表れているだろう。

*1:そこがみやび/ひなびの対立などとは異なる。