CSF on コンビニ

CSF-MLへの五十嵐さんからのメッセージ;


CSF10月例会 「コンビニ」の現在

先般予告させていただきましたとおり、10月のCSFはコンビニ特集です。
さまざまな角度からコンビニエンスストアの現在を検討するご論考を発表されてきた田中大介さんと新雅史さんという気鋭のおふたりを報
告者に迎え、ご自身のコンビニバイト経験も豊富な原口剛さんにコメテーターをお願いしています。
コンビニという非常に現代的な場に関して、消費/空間/セキュリティ/ネットワーク/労働/経営/都市下層と、多様なアプローチからの議論が展開される、とても刺激的な例会となることでしょう。

なお、今回の発表者があげていらっしゃる参考文献のうちいくつかは、すでにネット上で閲覧することが可能です。
また、その他のものにつきましても、ネット上で閲覧できますように準備をしています。
当日の議論を実りあるものにするためにも、できるだけご一読いただけますと幸いです。


日時:10月28日(日)16:00〜
   (3時間程度を予定、終了後懇親会あり)

場所:武蔵大学7号館3階社会学部実習室2(7308教室)
http://www.musashi.ac.jp/modules/annai_kouhou/index.php?content_id=9


第1報告 田中大介(筑波大学大学院博士特別研究員、都市社会学

「日本社会と〈私〉をつなぐコンビニ――情報型資本主義と消費ネットワーク――」

ひとの目を気にせず、ふらっと立ち寄り、何を買うでもなくふらっと出て行ける気楽な〈私〉が離合集散する場所。コンビニは、こうした無数の〈私〉が〈私〉であることを可能にする高度に情報管理化したネットワークとして遍在している。本報告では、コンビニという装置と〈私〉の快楽が接続する構造を解きほぐすことによって、ナショナリズムとも言い難い、だらしなくも精妙な日本社会の一断面を記述したい。とりわけコンビニ(とそこにあつまる〈私〉)が、中心としてのアメリカの消費様式と周縁としての(日本を含む)アジアの非正規雇用という二つの「外部」をやんわりと内部化することによって成立した「日本的ネットワーク」であることが問題になるだろう。

参考文献:田中大介 2007 「CVSの『セーフティステーション化』の論理――2000年代における消費空間の管理社会的変容――」『社会学ジャーナル』第32号筑波大学社会学研究室


第2報告 新雅史(東京大学大学院、労働社会学/スポーツ社会学

「コンビニの歴史社会学――自生的秩序と計画の観点から――」

コンビニが登場して約30年ほど経つが、その初期的発展を支えたのは、酒屋・米屋といった零細小売業者の存在であった。この歴史的経緯は、今にいたるまで、以下の点でコンビニの存在を規定している。?それまでの家業的経営が「夫婦による近代的経営」と翻訳されることによってコンビニの24時間365日営業が正当化された。?数少ない規制商品を販売していた際は消費者ニーズを先取りすることが可能であったが、コンビニの長時間営業と多品種販売はそうした以前の「専門性」を削り落としてしまった。
オーナーの「専門性」は人のマネジメントに位置づけられる一方で、商品発注は「消費者=素人=不安定就労者」のアドホックな欲望が反映されることになった。
当日は、コンビニの出自を零細小売という存在からまなざしつつ、都市空間における「自生的秩序と計画」の問題を歴史的な視点から考察することをこころみたい。

参考文献:新雅史(2005)「労働をとりまく新しい合理性」『書評ソシオロゴス』1
http://www.l.u-tokyo.ac.jp/!%7Eslogos/review/review0105arata.pdf
新雅史(2006)「消費と労働による「自己実現」の果てに」『論座』2006年10月号
(http://opendoors.asahi.com/ronza/story/200610_1.shtml)
新雅史(2007)「被差別部落の酒屋がコンビニに変わるまで」遠藤薫編『グローバリゼーションと文化変容』、世界思想社


コメンテーター 原口剛(大阪市立大学COE研究員、都市社会地理学)