Pankaj Mishra Temptations of the West

Temptations of the West: How to Be Modern in India, Pakistan, Tibet, And Beyond

Temptations of the West: How to Be Modern in India, Pakistan, Tibet, And Beyond

Pankaj Mishra Temptations of the West:How to Be Modern in India, Pakistan, Tibet, and Beyond*1を最近読了した。7月の末に買って、その後の香港・北海旅行中*2に殆ど3分の2以上読んでしまったのだが、その後また放置して、ようやく最近読了。
先ず目次を書き出しておこう;

Preface


Prologue
Benares: Learning to Read


Part One
Allahabad: The Nehrus, the Gandhis, and Democracy
Arodhya: The Modernity of Hinduism
Bollywood: Indian Shining


Part Two
Kashmir: The Cost of Nationalism
Pakistan: Jihad Globalized
Afghanistan: Communists, Mullahs, and Warlords


Part Three
Nepal: The “People’s War”
Tibet: A Backward Country

もし日本で出版されるとしたら、キャッチ・コピーは激動の印度文化圏への体当たりレポート!!という感じになるのだろうか。実際に、学生時代の著者自身の知的人格形成を主に語ったプロローグの”Benares: Learning to Read”とボンベイ(ムンバイ)の映画産業を取材した”Bollywood: Indian Shining”を除くと、著者が訪れ・書き綴っている場所はみな、血腥い紛争(闘争)の現場である。それも現在進行中の紛争(闘争)。先ず、私の無知故か、この本の隅々に記されている印度(パキスタンを含む)、アフガニスタン、ネパール等の政治史、経済史、宗教史、文化史的事実は新鮮であり、読んでいて蒙を啓かれる思いがした。このことは、多分この本が主な読者として想定している欧米(英語圏)の人にとってもそうなのだろう。特に、独立後の印度を支配してきたネルーとその娘(インディラ・ガンジー)と孫を中心に記述した”Allahabad: The Nehrus, the Gandhis, and Democracy”には独立後の印度の歴史が1章に濃縮されており、ここだけでも印度現代史入門として読まれることを推奨したい。
さて、Temptations of the Westとは意味深長なタイトル。このタイトルの意味するところを著者は直接語ってはいない。私の推測を語れば、「西洋(the West)」の両義性ということであろう。ここで訪ねられ・描かれている社会にとって、「西洋(the West)」は災禍であるとともに希望であった(ある)。つまり、印度にしてもアフガニスタンにしてもネパールにしてもチベットにしても、近代は「西洋」からもたらされた。しかし、近代は「西洋」からの贈与や貢ぎ物という仕方ではなく、侵略や殖民地化という仕方でもたらされた。それと同時に、「西洋」からの近代の一撃によって生じた自らの社会・文化の危機から脱する希望(例えば、民主主義や経済成長)もまた「西洋」にあった(ある)。さらに、これらの地に(著者が本書で報告しているような)凄惨な紛争(闘争)や虐殺を生み出し、今日ではこれらの土地の〈後進性〉というレイベリングの素ともなっているナショナリズム、宗教的ファンダメンタリズム或いは共産主義のようなイデオロギーも、災禍であると同時に希望でもある「西洋」との交渉の中から構成されてきたもの、また「西洋」に発するグローバルな近代の中で、「西洋」に積極的に支援される仕方で生み出されたものなのである(アル・カイーダの起源!)。
Prefaceで、著者は訪れた諸社会は”the same dilemma”に直面しているという――”How do people with traditions extending back several millennia modernize themselves?” さらに、

Western ideologies, whether of colonialism, communism, or globalization, have confronted the countries I visited—India, Pakistan, Afghanistan, Nepal, and Tibet—with the same challenge: modernize or perish. But the wrenching process of remaking life and society in all their aspects (social, economic, existential) frequently collapses in violence, which affects not just South Asia but also, as the horrific events of 9/11 showed, the apparently remote and self-contained worlds of the West.
と書いている。
ところで、「「このほかにも、こんないい本がある」「この本は日本語でも翻訳が出ている」「インドの本なら、ここで買える」とか、「インドに行ったら、この本屋に行くとよい」みたいな情報を募集中です」と「うに」さん*3。厳密に印度本国に住んでいる印度系の作家ということではないですが(彼は倫敦在住)、先ずはこのTemptations of the Westをお薦め。また、この人も現在は韓国在住ですが、Mishi SaranのChasing the Monk's Shadow: A Journey in the Footsteps of Xuanzang*4も挙げておきます。
Chasing the Monk's Shadow

Chasing the Monk's Shadow

あと、印度系の作家では、Pico Iyerという人が日本在住じゃなかったかしら。

Pankaj Mishraは仏陀An End to Suffering: The Buddha in the Worldも書いている。こちらも読みたい。