美術館で写真を撮ること、或いは図録のこと

小倉秀夫という方が


欧米の美術館では、原則写真撮影は自由であり、世界中の人々がそこに行った記念にとばしばし写真を撮っているのです(所詮アマチュアの撮る写真ですから、写真を撮って後で何度も鑑賞するという目的にはあまり使えません。)。しかも、モネやルノアール等の著作権切れの作品のみならず、ピカソなどのように著作権がまだ切れていない画家の作品についても、来場者による写真撮影は原則禁止されてないというのが欧米基準です。
http://benli.cocolog-nifty.com/benli/2007/06/post_d3ea.html
と書いている。それに対して、「日本の場合、殆どの美術館は、著作権の保護期間を経過したか否か等とは関係なしに、一律写真撮影を禁止しています」ということである。
ところで、上海に来て吃驚したことのひとつに、美術館での写真撮影が殆ど野放し状態だということだ。上の文章に照らせば、私は日本的常識に縛られていたことになる。それはさて措き、上海の美術館で写真を撮っている人々は大まかに2種類に分けられると思う。1つは作品の前でポーズをつけて記念撮影という感じの人たちであり、もう1つは(多分美術とかデザイン専攻で)研究のために作品の写真を撮りまくっている人たち。
後者の場合、日本の感覚だと、展覧会の図録を買えばいいじゃんと思ってしまうのだが、中国では展覧会の図録というのはえらく高い。上海美術館の入場料は20元だが、ちょっと規模の大きい展覧会の図録だと、入場料の10倍以上する。日本の場合、入場料が1000円だとして、図録は高くても3000円くらいだろう。はっきり言って、日本の美術展の図録というのはお買い得である。普通にあれだけの厚さの美術書を買えば、その数倍はする筈。何故図録がお買い得なのかといえば、先ず大量に印刷されるため、単価が低くなっている、そして図録の場合は一般の書店では販売しないという条件で、作品の図版の使用料が安く設定されていることによるのだろう。中国ではそうした安くなるメカニズムが機能していないということなのだろう。
美術展の図録の割安感に対して、映画のプログラムは(図録以上に大量に印刷されているにも拘わらず)割高な感じがする。とはいっても、映画館で映画を観る娯しみの1つにはプログラムを買うということも含まれると思っている。中国の映画館ではプログラムは売っていない。やはり、映画のプログラムの存在ということ自体が誇るべき日本文化だ。