仕事のために中国語の辞書をひっくり返していて、「左」という字がそもそも「よこしま」、「まちがっている」、「相反する」という意味を有していたことに改めて気づく。邪道という意味での「左道」という言葉もあるしね。そうすると、左翼は邪翼か。これは、伝統的中国もロベール・エルツがいう「右手の優越」の文化圏だったということだろう。しかしながら、交通信号の体系も〈反革命〉の嫌疑がかけられていた時代の「左」という字の命運はどんなものだったのだろうか。
左翼は邪翼ということだが、左翼にとってはいいことなのかも知れない。〈正しさ〉からの解放。正しくないことを恐れなくてもいいということだ。
因みに、英語や仏蘭西語のright/droitは正しさの含意があるが*1、漢字の「右」には「上位」という意味はあるものの(「無出其右」、その右に出るものはない)、〈正しさ〉までは背負っていないようだ。だから、「慧眼」と「謦咳」を取り違えても許されるわけか。

- 作者: ロベールエルツ,Robert Hertz,吉田禎吾,板橋作美,内藤莞爾
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2001/06
- メディア: 文庫
- クリック: 4回
- この商品を含むブログ (10件) を見る
*1:leftは放置されたもの?