もう一つの「新自由主義」(メモ)

新自由主義」と訳されている経済思想には、neo-liberalismとnew liberalismがある。以下、new liberalismについてメモ;


T. H. グリーンからL. T. ホブハウスやJ. A. ホブソンらの「新自由主義」(new iberalism)と呼ばれる立場にいたる、19世紀末から20世紀はじめのイギリスの思想においても、〈市場〉が自由にとっての脅威であるという見方がとられるようになる。〈市場〉が惹き起こす貧困やそれが生活に及ぼす負の影響は、個々人の私的な問題としてではなく「社会問題」――社会の構造によって惹き起こされている問題――としてとらえ返され、富の分配の著しい不平等を是正し、人びとの自由を実効的に実現することが〈国家〉の果たすべき役割として認識される。彼ら――とくにホブハウス――は、生存の維持のみならず、「人格的な発展」をも可能にする物質的な条件を整備することを〈国家〉に求め、リベラリズムの課題は、国家による介入そのものを批判することではなく、その介入の質を問うことにあると考える。ホブハウスによれば、各人が享受する富をもたらす源泉には「個人的な基礎」と「社会的な基礎」の双方があり、後者を源泉とする富の部分を、労働と生活への権利を人びとに保障するための社会的資源として用いることは何ら不正ではない(略)(齋藤純一『自由』岩波書店、pp.11-12)。
また、「人びとが自由であるための条件として公的な生活保障を位置づける彼らの思想は、後の「ベヴァリッジ報告」(1942年)にも影響を与えるなど、今日にいたる社会保障にとって重要な思想的源泉の一つとなっている」(p.12)。
自由 (思考のフロンティア)

自由 (思考のフロンティア)