「バカ地域」の出現?

承前*1


小中校予算に学力テスト反映=来年度、配分に4段階−東京都足立区教委

 東京都足立区教育委員会は4日までに、区立小中学校に配分する予算の一部について、2007年度は都と区が実施する学力テストの成績などに応じて差をつける方針を固めた。各学校を4つのランクに分け、例えば中学校の場合、約500万〜約200万円とする考え。
 区教委は「(学力向上などで)頑張った学校を正当に評価するようにしたい。成績が低い学校には、別建ての学力向上予算で非常勤講師を派遣するなど対応は可能」と説明している。 
時事通信) - 11月4日13時1分更新
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20061104-00000032-jij-pol

『朝日』の記事はもうちょっと詳しい;

学力テストで予算に差 足立区教委、小中学校4ランクに

2006年11月04日08時01分



 東京都足立区教委は、区立小中学校に配分する07年度予算で、都と区の教委がそれぞれ実施している学力テストの成績に応じて各校の予算枠に差をつける方針を固めた。小学校計72校、中学校計37校をそれぞれ4段階にランク分けし、最上位は約500万(中学)〜約400万円(小学)、最下位は約200万円にする予定。都のテストで同区が低迷していることなどから、学校間競争をさらに促す必要があると判断した。

 区教委によると、差をつけるのは各校の自主的な取り組みを支援する「特色づくり予算」の金額。各校の申請をもとに配分し、外国人講師や補習指導ボランティアの派遣費用などに使われている。07年度は前年度比約1億5000万円増の約4億1000万円を予定している。

 ランクづけの大きな根拠は、年1回実施される都の学力テスト(小5と中2の全員が対象)と区のテスト(小2以上の全学年全員が対象)。都テストで、各校の平均正答率が、都平均と区平均以上の科目がそれぞれいくつあるか▽区テストの成績が前年度からどれだけ伸びたか――などの項目を設けて査定する。

 これらの成績と校長からのヒアリング結果を8対2の比率で数値化し、各校の「実績」とする。満点は小学校が165点、中学校が170点で、上位から順にA(全体の1割)、B(同2割)、C(同3割)、D(同4割)のランクに区分けする。

 予算枠はAランクの中学校で約500万円、小学校で約400万円。B、Cと減らし、Dランクは小中学校ともに約200万円にする。各校が「特色づくり予算」について申請すると、ランクの枠内で認める。

 教材費や光熱費など学校運営の必要経費は、従来通り児童・生徒数やクラス数などの「基礎数」に応じて配分する。これまで中学校は1校あたり平均で約1000万円、小学校は約850万円を配分してきた。07年度はこの経費にむだがないかどうかを厳しく精査して圧縮し、「特色づくり予算」の増額分に振り分ける方針だ。

 同区は02年度に区全域の小中学校で学校選択制を導入。都と区のテスト結果については、教科別まで各校の平均正答率をホームページなどで公表している。人気中学校の多くが学力テストの平均点が高い傾向がある。今回のランクづけは公表しない。

 04年2月に初めて実施された都のテストで、同区の成績は23区中23位だった。今年1月の都のテストでは中学校は22位、小学校は21位と順位を上げた。

 内藤博道・区教育長は「頑張った学校に報い、校長と教員の意欲を高めることが、区全体の基礎基本の学力向上につながる。これまでも希望に応じて非常勤講師を追加配置するなどの対策をとっており、成績のよい学校ばかり優遇するわけではない」と話している。

 文部科学省の担当者は「学力テストの結果を予算に反映する例は聞いたことがない」と話している。
http://book.asahi.com/news/OSK200611020051.html

これについて、kaikai00さんは、

まず、予算の傾斜配分は、上位校と開校との格差をさらに拡大し、固定化することに他ならない。なぜなら、開校ほど資源を投入すべきであるのに、そこへの資源の投資を削ることになっているからだ。それは、格差をさらに拡大することになる。また、予算が削減される下位校から増額される上位校へと子どもが自由に移動し、それを受け入れる体制が整っていなければ、その格差は固定化されることになる。

 もう一つの問題も指摘しておきたい。こういった政策は、自分より下の存在がいるということを明確に意識させられることで、そこに自分は行きたくないという意識を持たせ、さらに、自分はそういう人たちとは違うという意識を生む。その結果何が生まれるか。「自己責任」の強調とそういうところへ税金などを投入することへの批判だ。格差が拡大し、固定化することで自分の安全を確保し、より自分のために資源が投入されることを望むようになる。

 足立区は、なぜ都のテストで同区が低迷しているのかきちんと理解していない。だから、こういう浅はかな教育改革を実施しようとしている。
http://d.hatena.ne.jp/kaikai00/20061104/1162603257

と指摘している。また、http://blog.goo.ne.jp/okanyan/e/74ed1466a8f2e0a2232d4d9f6e72b213も参照。「バカ地域」というのはここからいただいた。ただ、「足立区では基本的に学校自由選択,変更制度を採用していないはず」とあるが、上の『朝日』の記事によれば、「同区は02年度に区全域の小中学校で学校選択制を導入」ということだが、如何?
これって、通知表と同じ相対評価なんだ。教育関係者というのは相対評価が好きなんだな。ということは、仮令区全体の学力が上昇したとしても、相対的にダメな学校、つまり予算を削られてしまう学校というのは産出されてしまうことになる。これは一方では予算削減のためのエクスキューズだという気がしないわけでもない。ただ、http://blog.goo.ne.jp/okanyan/e/74ed1466a8f2e0a2232d4d9f6e72b213

バカ地域のレッテルが貼られてしまうと,それを原因に地価が下がり,地域に住んでいる人もどんどん流出してしまいます。そして,家賃なども下がってくるため,経済的弱者が多く住み始めるようになってきて,最悪「スラム街」のような状態にもなりかねません。
と推測されている事態に行き着くかどうかは別として、kaikai00さんも危惧しているような、デフレ・スパイラルにも似た逆向きのプロセスが稼動されてしまうということは大いにあり得ることだろうと思う。
それはともかく、「学力テスト」の点数の上下といっても、許容誤差の範囲内といってもいいような数字のブレに一喜一憂するわけだ。問題は評価がたんなる数字の上下によって機械的にはなされないというところにもある。点数の変動とともに「校長からのヒアリング結果」というのが評価基準には加わるらしい。これは見るからに不透明であり、校長の政治力がものをいったり、「点数」以外の諸々のことが上から突っ込まれたりするということはないのだろうか。また、成績の悪い子どもは〈長期療養のため病欠〉ということにしたりとか、にわかに〈特殊学級〉の人数が増えるとか、そういうことが起きないとも限らない。