小島信夫

『読売』の記事なり;


芥川賞作家・小島信夫氏が死去
 「抱擁家族」「別れる理由」など、戦後の日本文学を代表する長編小説で知られる作家で文化功労賞の小島信夫(こじま・のぶお)さんが、26日午前3時58分、肺炎のため、東京都内の病院で死去した。91歳。

 家族で密葬を行い、お別れの会を後日開く。喪主は長女、井筒かの子さん。自宅は東京都国分寺市光町1の6の11。

 今年5月末に長編「残光」を刊行するなど、最近まで執筆活動を続けていたが、6月19日に脳こうそくで自宅で倒れた。

 岐阜県生まれ。旧制第一高等学校を経て東大英文科を卒業。第2次大戦中は暗号兵として中国に配属された。51年、明治大学講師に就任したころから本格的に創作を始め、短編「小銃」でデビュー。55年「アメリカン・スクール」で庄野潤三氏と共に芥川賞を受賞した。

 安岡章太郎吉行淳之介遠藤周作氏らと共に「第三の新人」の長兄的存在として、抽象表現を帯びた前衛的な作風に独特の持ち味があった。高度成長期の中流家庭の崩壊を描いた「抱擁家族」は、江藤淳氏らの絶賛を浴び、65年に第1回谷崎潤一郎賞を受賞した。

 文芸誌「群像」に12年半連載した大長編「別れる理由」では、作家の実生活と小説の虚構の仕切りを取り払う大胆な試みを展開。現代小説の形式を広げたとして82年、野間文芸賞を受賞。98年には「抱擁家族」一家の30年後を描いた本紙連載小説「うるわしき日々」で読売文学賞を受賞。「私の作家評伝」(芸術選奨文部大臣賞)などの評論も多い。

(2006年10月26日22時17分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/culture/news/20061026i503.htm