マンダリン

『朝日』の記事なり;


中国人の4割「普通話」話せず 英字紙報道

 5日付の中国の英字紙チャイナ・デーリーは、中国人の4割以上が「普通話」と呼ばれる標準語を話せないと報じた。方言が多様なうえ、地方の貧しい農村に教育が行き渡らない実態が背景にはある。同じ中国人でありながら国民の半数近くが対話に不自由するという現実に、経済発展への悪影響を懸念する声もある。

 教育省当局者が同紙に明らかにした。04年の段階で、中国の約13億人のうち普通話ができる割合は53%にとどまった。当局者は「政府の取り組みで状況は改善されているが、いまも40%以上は標準的な普通話ができない」と語った。

 同紙によると、中国では有力な方言だけで約80もある。「普通話」は北京などの北方語を基礎にしている。中国政府は「共通の言葉が徹底されないと、経済成長の障害にもなる」と、9月第3週を普通話の推進週間にしている。

 一方、海外では中国の経済力や影響力の拡大につれて「普通話」の学習熱は高まり、約3千万人が勉強していると教育省は推計している。

(09/05)
http://www.asahi.com/world/china/news/TKY200609050335.html

「同じ中国人でありながら国民の半数近くが対話に不自由するという現実」ということだが、これはちょっとどうかなと思う。北京語もその一部に含む中国語の北方方言というのは、西南部の雲南などにも拡がり、実際中国領土のかなりの部分を覆っている。この範囲ならば、かなりきつい訛りはあるにせよ、意思の疎通には充分である。その範囲にある限り、方言というのは、中国人にとって、お笑いの対象になったり、差異を楽しんだりする対象であったりするわけだ。事実上〈外国語〉である東南部の方言とはレヴェルを異にする。「地方の貧しい農村に教育が行き渡らない実態」ということだが、上海にせよ広東にせよ、東南部の人たちは(逆に)自分たちの経済力を背景にマンダリンに対して距離を取っているといえる。逆に「地方の貧しい農村」出身者にとって、マンダリンは大都市に出稼ぎに行くためのサヴァイヴァル・ツールでもある。
上海では、けっこう気取った店に行かない限り、店員は上海語を使う。上海人にとっては、マンダリンというのは田舎者や(外国人を含む)余所者を相手に使う言葉であるといえるかもしれない。
あと、最近の中国における方言の活性化のひとつの背景として、若者におけるヒップ・ホップの流行があるかもしれない。これまで、(香港や台湾を含む)中国でポップ・ミュージックはマンダリン若しくは広東語で歌われるのが通例だったが、ラップの場合は原則としてその土地の方言でかたられるからだ。