差別的な顧客その他

『朝日』の記事なり;


「顧客から差別」在日男性が提訴 勤務先も支援 大阪
2006年07月31日14時46分

 取引先から「(北朝鮮の)スパイか」などと差別的な発言をされて精神的苦痛を受けたとして、大手住宅メーカー積水ハウス大阪市)に勤める在日韓国人の徐文平さん(45)=大阪府八尾市=が31日、取引先の男性を相手に慰謝料300万円などの損害賠償を求める訴訟を大阪地裁に起こした。積水ハウスも「深刻な人権侵害だ」として、訴訟費用負担などの面で支援する。在日韓国人社員が取引先相手に起こした訴訟を会社側が支援するのは異例。

 訴状によると、積水ハウスでマンションのアフターサービスなどを担当する徐さんは05年2月、マンションの修理について報告するために府内のオーナー男性宅を訪問。徐さんが漢字とハングルで名前を記載した名刺を差し出すと、男性は「これはスパイの意味やないか」「朝鮮総連の回し者か」などと差別的な発言をしたとしている。

 朝日新聞社の取材に対し、男性は「名刺の表記について質問をするなどしたが、差別的な意図はなかった」と反論している。
http://www.asahi.com/national/update/0731/OSK200607310093.html

実はこの件に関して真っ先に言いたかったことは、既にkechackさん*1が書いていた。なので、そのエントリーは前提ということで話を進めたい。これについての差別的且つ酷い反応というのは、例えばhttp://fromdusktildawn.g.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20060730/1154237497で取り上げられているようなことと関係があるのかも知れない。しかし、これについては、つまり「負け組」や〈非モテ〉の八つ当たりというのはちょっと留保したい。たしかに最初読んだときはふむふむと思ったし、マルクスがルンペン・プロレタリアートをあれ程憎悪した理由を考えなければならないとメモもした。しかし、ちょっと考えてみれば、それって、こちら側で想像しているだけなのかもしれないということになる。さらにいえば、差別的なバカウヨを殊更に他者化することによって、自らのアイデンティティを防衛しようとする仕草なのだといえてしまうかも知れないのだ。また、もう一つ、私の思い込みを相対化しなければならないことがある。酷い書き込みというのは、〈2ちゃんねる〉のような〈匿名性の闇〉において生起するものであって、〈2ちゃんねらー〉などは公共性の光の下では(蜚〓*2の如く)焼け死んでしまうものだと思っていた。kechackさんは「はてな」のエントリーを引用している。私はMixiを見たのだが、Mixiでもこの件に関しては酷い書き込みが多い。しかも、Mixiの日記というのは、本名を曝している人も多いわけで、〈2ちゃんねる〉のような完全な匿名空間ではない。
さて、名刺を貰うというのは初対面ということだろうけど、初対面の相手にいきなり「朝鮮総連の回し者か」というのはどうよと思う。どうぞ私をぶん殴って下さいといっているようなものだ*3。ただ、裁判になると、水掛け論が続くのではないかとも思う。加害者側が「差別的な意図はなかった」と主張している以上、テープやヴィデオなどの決定的な証拠がない限り、真相を証明するのはなかなか困難なところがあるのではないだろうか。こういう場合、間接的証拠というか、当人が日常的に差別的言動を繰り返しているかどうかという証言や証拠(例えばネットへの投稿とか)が動員されるのだろうか。
それはさておき、この訴訟は、差別問題に限らず、客(クライアント)による暴行やハラスメント*4に対する対応にも影響を与えるのではないだろうか。

*1:http://d.hatena.ne.jp/kechack/20060731/p1

*2:むしへん+廉。

*3:関東と関西の文化の差異というのはあるかも知れないが、また関西人の方が同和教育の普及などによって、差別問題には敏感になっているとも思うのだが、どうなのだろうか。

*4:Cf. http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20060717/1153153941