The Analects translated by Arthur Waley

中国では洋書は高いし、そもそも(日本でいえば)丸善紀伊国屋レヴェルの洋書屋もない。ただ、大きな本屋には一応洋書コーナーがあるのだが、中心は中国旅行ガイド、ビジネス書、それから古今の小説類が中心で、アカデミックな本は殆どない*1
中国産の洋書は安い。例えば、外語教学與研究出版社の「大師経典文庫(World Classics)」というシリーズ。その中のConfuciusThe Analects(1998)を買ったのは、偏に訳者がArthur Waley*2だったからである。この英訳はそもそも1938年に刊行された。この本は1996年のWordsworth版

Analects (Wordsworth Classics)

Analects (Wordsworth Classics)

に依拠しているらしい。英訳、原文(簡体字)のほかに、湯一介氏の「序言」を付す。
例えば、冒頭の「学而時習之、不亦悦乎」は、”To learn and at due times to repeat what one has learnt, is that not after all a pleasure?”である。
日本では、Waleyは『源氏物語』の最初の訳者として専ら知られているかも知れないが、やはりその本領は中国文学であろう。Waleyの本で最もお得だと思われた本は、(多分既に絶版になっていると思うが)岩波新書の『李白』。日本の読者は、李白の詩句のWaleyによる英訳に加えて、原文、読み下し、それから(Waleyの英語からの)現代語訳を一挙に愉しめるのだ。
今回、http://www.umass.edu/wsp/sinology/persons/waley.htmlを見たら、Waleyは1966年まで生きていたのだ。
自らへの戒めとして、

子曰:“不患人之不自己知、患不知人也。”

The Master said, (The good man) does not grieve that other people do not recognize his merits. His only anxiety is lest he should fail to recognize theirs.
(p.10, 11)

を最後に引用しておく。

*1:偶に日本の文庫本がちょろっと置いてある。

*2:Cf. http://www.umass.edu/wsp/sinology/persons/waley.html