承前*1
例の「君が代」はそもそも『古今集』の歌*2。
偶々『新古今』(佐佐木信綱校訂の岩波文庫版)を開いていたので、「きみがよ」*3コレクション。「きみがよ」で始まる歌は「賀歌」及び「雑歌」の部に収められている。
以上、「賀歌」。
710
君が世の年のかずをばしろたへの濱の眞砂とたれかしきけむ 紀貫之
713
君が世に逢ふべき春の多ければ散るとも櫻あくまでぞ見む 土御門右大臣
724
君が代の千歳のかずもかぎりなく曇らぬ空の光にぞ見る 六條右大臣
730
君が代は久しかるべしわたらひや五十鈴の川の流絶えせで 前中納言匡房
732
君が世に逢へるは誰も嬉しきを花は色にも出でにけるかな 刑部卿範兼
1577
君が代にあふくま川のうもれ木も氷の下に春を待ちけり 藤原家隆朝臣
(「雑歌 上」)
『新古今』に収められた「きみがよ」のうち、明らかに天皇に言及しているのは、「堀河院の大嘗會御禊、日頃雨降りて、その日になりて空晴れて侍りければ、紀伊典侍に申しける」という詞書の附せられた724の六條右大臣の歌くらいか。
1757
君が代にあはずは何を玉の緒の長くとまでは惜しまれじ身を 定家朝臣
ところで、「君が代」の政治的に正しい英訳は”Emperor’s Reign”だが、ここで見る限り、「よ」はreignではなく、lifeだと思われる。
*1:http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20060529/1148917245
*2:ところで、あれ、字余りですよね。
*3:平仮名にしたのは、「代」という表記と「世」という表記が混在しているため。