太宰治『惜別』

 陳佳「“它展示了日本人的魯迅観”」『東方早報』2006年4月18日


魯迅を主人公にした太宰治の『惜別』の中訳本が北京の新星出版社から出版される。『惜別』は戦時中に「内閣情報局」と「文学報国会」の委託によって創作されたものであり、記事でも竹内好による批判が戦後日本におけるその作品評価に重大な影響を与えてきたこと、また1977年の筑摩版『太宰治全集』にも収録されていないことが言及されている*1
中国側の研究者による『惜別』再評価。例えば、中国社会科学院魯迅研究所の趙京華氏は、「太宰治の他の作品と比較してレヴェルは低い」としながら、


趙京華表示、作為日本政府布置的一項政治任務、《惜別》却在很大程度上突破了“大東亜共栄圏”的意識形態、以一個日本作家的心態、去理解後来也成為作家的魯迅当年的心霊需求、這在文化交流史上是個値得関注的現象。他[太宰]在小説中指出魯迅在仙台的生活対其思想形成影響巨大。那段屈辱的辺縁人生活使其形成了“孤僻”性格。此外、小説対魯迅弃医従文和屈辱信作者動機的解釈、都可以給学者以啓迪。
ということである。因みに、「意識形態」はideologyの訳なり。また、董炳月という学者の場合;

学者董炳月則強調、《惜別》的価値主要是立足於中日現代関係史和日本人的魯迅観。這部作品在中日戦争的特殊背景下将魯迅太宰治本人的複雑性展示出来、包含了文化観念與国家意識形態的多重糾葛、與魯迅的名文《藤野先生》構成了奇特的関係、具有多側面的認識価値。

*1:新潮文庫には入っているでしょ。