「教育が悪い」といっても

 『毎日』の記事なり;


安倍官房長官ライブドア事件は「教育が悪いからだ」

 安倍晋三官房長官は16日夜、東京都内のホテルで、小泉純一郎首相と自民党総務会メンバーらとの会食に同席した。安倍氏はこの中で「ライブドア事件(の原因)は規制緩和と言われるが、教育が悪いからだ。教育は大事で、教育基本法改正案も出したい」と述べ、同方改正案の今国会成立に意欲を示した。

毎日新聞 2006年2月16日 23時13分
http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/gyousei/news/20060217k0000m010141000c.html

この記事には何かしらの悪意を感じる。この記事をいきなり読んでも、安倍晋三は馬鹿だという結論しか出てこないからだ。その後、「会食」のメニューだとか、「教育が悪いからだ」という理由の理由を詳細に報じた記事というのは出ているのだろうか。もしそうでなかったら、この記事は安倍晋三は馬鹿だというメッセージを伝える以外の意味は持たないことになる。
 このように、何故安倍氏が「ライブドア事件」と「教育」の間に因果関係を設定するのかはわからないのだが、もしそうだったら、「教育」というのは凄い力を持っていることになり、教育関係者はやはり慶ぶべきなのだろうか。問題は、寧ろ「教育」がそんな万能の力を持っている(持ちうる)かのように幻想してしまうことの方かも知れない。kmizusawaさん*1は、「なんでもかんでも教育に責任があるという言い方は無責任な思考停止である上に、その「教育」の対象になっている人たち(主に子どもや青少年)のことも「大人に「教育」されたことを受動的にすぐ信じ込む」存在として貶めている言い方だと思う」とおっしゃっている。それだけでなく、勝手にそんな力を賦与されたら、教育関係者だって気が重いだろう。「教育」の効果によって、それを真に受ける馬鹿も出てくるかも知れないし。
 ところで、上の安倍発言の前提では、「教育」というのは先ず第一義的に〈知識や技術の伝授〉を意味しているのではないらしい。もし、株式市場のメカニズムについて正しい知識の伝達が行われていないので、騙されて損をする奴が出てくるという意味だったら、上に書いたことを撤回して、安倍氏に謝罪しなければならないけれど、そうではないですよね。そうだったら、「教育基本法改正案」なんか関係ないでしょうし。
 最後に、anhedonia氏の、

そういえば、水俣病(に象徴される公害事件)では、企業体の保護を優先し、被害の拡大を抑止することに消極的で、被害者救済を最小限にしようとし、選択を故意に誤らせたのは、戦前の教育を受けた連中だったな。

たしかに、戦前の教育は悪かったと言えるな。
http://d.hatena.ne.jp/anhedonia/20060218#p1

を引用しておこう。