「日大」イメージ

キャリコネ編集部「日大、学生に「大学のイメージ下げる行動は慎んで」と通達 現役学生は「イメージ下げているのは大学。むしろ学生に謝罪して」と憤慨」https://news.careerconnection.jp/?p=54430


日大アメフト部「悪質タックル」事件*1の余波。
事件後、日大当局は学生に対して「日大のイメージを下げるような行動は慎め」という主旨の通知を出しているという。具体的には、「歩道で広がって歩いたり、信号を無視したりしてキャンパス近隣の住民に迷惑を掛けないように」ということらしい。まあ「近隣の住民」からのこういうクレームは日常的にあって、「迷惑を掛けないように」という通知も日常的に行われているものなんじゃないかとは思うのだが。大学というところは。さらに、マス・メディアの取材を受けないようにという箝口令も敷かれているという。「大学側がイメージを下げるようなことをして学生に迷惑を掛けているわけですから、まずは大学から学生に謝ってほしいと多くの学生が思っていますよ」というのは、その通りだと思う。
さて、そもそも「日大」については統一的・整合的なイメージを構成することが難しかったということがある。何故か知らないけれど、日本大学ってどんな大学ですかと尋ねられたことが何度かある。私はといえば、日大の近所に長年住んでいたということはあるけれど、日大の学生だったことも日大で教えたことも全くないのだ。尋ねられる度に、まあ所謂量産型大学でしょうかねというくらいしかできなかったのだ。「日大」のイメージが思い浮かばないというのは、日大のあり方に関係している。大学のイメージを決める要素として、勿論福沢諭吉新島襄大隈重信といった創設者、大学の内外に認められた独特の学統が重要であるということは言うまでもない。ただ、最もわかりやすくて決定的な要素は風景だろう。学内の風景だけでなく、大学を取り巻く周囲の本屋やカフェや食堂などを含む街の風景。東京には、例えば早稲田大学青山学院大大学、成城大学といった街の名前を関した大学がある。これらの大学のイメージは、中の人にとっても外の人にとっても、それぞれ早稲田、青山、成城という土地と切り離すことはできない。ほかにも、東大といえば駒場と本郷、慶應といえば三田と日吉、東洋といえば白山、成蹊といえば吉祥寺*2……ということになる。だから、他方で、同じ大学といえどもその同じ風景を共有しない部分への拒否反応は強いともいえるのでは? 早稲田は所沢にもキャンパスがあるけれど、早稲田の学生さんに、あの所沢体育大学のことですか? といわれたことは何度かある。慶應についても、三田や日吉の人から、SFC慶應として認めないという気持ちを感じたことは何度かある。日大は、学部毎に独立したキャンパスが東日本の各地に散在している。これでは、日大としての統一したイメージを結ぶことはできない。多分、それは私のような余所者だけじゃなくて、日大の先生方や学生さんも同じなんじゃないかと思う。その人たちが「日大」だと思っているイメージというのは要するに自分が通っている学部のイメージでしかないのでは? 江古田の藝術学部とか、神田三崎町のの経済学部とか、習志野生産工学部とか。多分、殆どの学生さんの交友関係は自分の学部内に限定されるんじゃないか。今回の件に絡んで、内田正人前監督や学長が記者会見をやった日本大学本部というのは市ヶ谷駅の近くに目立たない仕方で建っているのだが、その本部に行ったことのある学生さんは(多分)殆どいないのでは?  そうなると、〈想像の共同体〉としての「日大」はどのようにして実感されているのかという疑問もわくのだが、そもそも統一的なイメージが湧きにくい「日大」にとって、今回の危機は普通の大学以上にダメージが大きいかも知れない。各地のキャンパス(学部)の風景とは全く切り離された「日大」という字がメディアで反復され続けているからだ。まあ、部外者のお気楽な感想として言えば、世間からの白い目を日大関係者が内面化して、さらに大学当局への怒りやアメフト選手への同情などが合わさることによって、日本大学という想像の共同体(或いは日大というアイデンティティ)は新たに構築されることになるんじゃないかとも思う。

被告になれず

承前*1

深海*2大阪地検特捜部「公文書の本質が変わらないから佐川ら38人全員不起訴」→財務省「公文書改ざん指示したのは佐川でした」→二階幹事長「これですっきり」→安倍首相「麻生続投」」https://buzzap.jp/news/20180601-moritomo-hell/


大阪地検特捜部は、森友学園問題に関する決済済み公文書改竄の廉で告発されていた佐川宣寿前国税庁長官を「嫌疑不十分」で「不起訴処分」とした。また、「森友」を巡る「背任容疑」で「告発」されていた財務官僚38人も全員「不起訴」。佐川君はあの山口敬之*3と同じステイタスになったわけだが、さらにナイスなストーリー展開があったようだ;


この不起訴の知らせを受けて財務省は即座にこの公文書改ざん問題について、佐川前国税庁長官が、部下の財務省職員が作成した改ざん原案を基にして最終的な改ざん部分を部下と共に決めていたことを認めました。

財務省は責任を明確にするため、佐川氏は停職の懲戒処分相当とし、実務で中心的な役割を果たした同局の中村稔総務課長も停職の懲戒処分とする方針を決めました。既に退職した佐川氏はこれまでよりさらに退職金が減額されるのみとなります。

大阪地検特捜部が「虚偽の文書を作成したとは言えない」と立件を見送り「刑事訴追の恐れ」がなくなった途端に財務省が決裁済み公文書改ざんを認めるという、特捜部としてはいい面の皮としか言えない事態が発生しています。

これが茶番劇でないならこの世に茶番劇は存在していないと言うしかありません。

See also
貫洞欣寛*4「森友問題、佐川氏ら38人全員が不起訴 各紙はどう報じた?」https://www.buzzfeed.com/jp/yoshihirokando/fukiso

*1:http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20180304/1520174038 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20180306/1520345174 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20180311/1520729070 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20180312/1520820898 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20180313/1520911677 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20180314/1521040212 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20180316/1521170126 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20180318/1521300830 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20180320/1521545409 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20180322/1521729457 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20180324/1521817988 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20180325/1521944693 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20180330/1522337093 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20180406/1523022564 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20180422/1524326223

*2:See also http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20150314/1426355148 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20150506/1430895824 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20150507/1431019975 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20150719/1437317901 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20151216/1450272918 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160425/1461605260 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160427/1461684014 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20170927/1506475616 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20171118/1511031063 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20171121/1511237344 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20180324/1521830669 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20180504/1525396859 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20180526/1527347080 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20180529/1527557695 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20180602/1527949714

*3:See also http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20170530/1496071704 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20170602/1496371973 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20170603/1496450833 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20170604/1496605008 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20170814/1502682332 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20171020/1508466467 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20171026/1508987214

*4:See also http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20110220/1298219880 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20150103/1420290486 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20150427/1430152551 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20150717/1437100253 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20180216/1518789269 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20180310/1520610106 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20180313/1520911677 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20180322/1521728135 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20180426/1524703129 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20180524/1527126099

Michael Ford

Tom Grater “Oscar-winning British set decorator Michael Ford dies aged 90” https://www.screendaily.com/news/oscar-winning-british-set-decorator-michael-ford-dies-age-90/5129773.article


英国の映画美術監督マイケル・フォード*1が他界。享年90歳。
彼が初めて美術監督としてセットをデザインしたのは1980年の『スター・ウォーズ 帝国の逆襲』*2。翌年『帝国の逆襲』でアカデミー賞にノミネートされ、その次の年にスピルバーグの『インディ・ジョーンズ レイダーズ 失われたアーク』でオスカーを受賞。1984年には『スター・ウォーズ ジェダイの帰還』でアカデミー賞候補になるが、受賞は逃す。1998年に『タイタニック*3で2度目のオスカー。

インディ・ジョーンズ レイダース 失われたアーク《聖櫃》 [DVD]

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See also
“Mort de Michael D. Ford, le directeur artistique des Aventuriers de l'Arche perduehttp://www.lefigaro.fr/cinema/2018/06/01/03002-20180601ARTFIG00178-mort-de-michael-d-ford-le-directeur-artistique-des-aventuriers-de-l-arche-perdue.php

サックス吠える

Jeffrey Sachs*1 “Trump's insane trade war” https://edition.cnn.com/2018/06/01/opinions/trumps-insane-trade-war-sachs/index.html *2


経済学者のジェフリー・サックス氏によるドナルド・トランプへの全否定的なコメント。
出だしに曰く、


Maybe Donald Trump really is the Manchurian Candidate, a stooge of some foreign potentate. Much more likely, Trump is just mentally unstable and narcissistic. Whichever it is, Trump is rapidly destroying American global leadership, alliances, and interests. Wednesday's announcement of new tariffs on steel and aluminum exports from Canada, Mexico, and the European Union is the latest bizarre and self-destructive move.

I have just returned from a trip to Europe. Across Europe, there was not a single word of respect for Trump. The constant refrain was extreme puzzlement and deep consternation. How did America fall so far so fast? What do we need to do to survive?

主な内容は、トランプの新関税政策(「貿易戦争」の日中からカナダや墨西哥EUへの拡大)に対する批判なのだが、出だしから人格に踏み込んで筆誅を加えている。最終的には合衆国憲法「修正第25条」を「使ってトランプを罷免せよと説いている;

The real answer to Trump's trade (and other) policies is the 25th Amendment*3. Trump is unwell and unfit to be President. He is a growing threat to the nation and the world.
The emperor had no clothes. This President has no sense.
ところで、サックス氏は国連のSustainable Development Solutions Network*4で『世界幸福度調査』*5に関わっているのだった。

40代から攻めて

漫画 君たちはどう生きるか

漫画 君たちはどう生きるか

森朋之「『君たちはどう生きるか』なぜマンガで大ヒット? 80年以上前の原作に感じた可能性とは」https://www.huffingtonpost.jp/2018/05/31/manga-kimitachiwadouikiruka_a_23448280/


羽賀翔一による漫画版『君たちはどう生きるか*1を巡って。担当編集者の鉄尾周一氏(マガジンハウス取締役)の話を中心に。
最初は「40代」だった;


本が発売された当初は「5万くらい売れたらいいな」と思っていたと鉄尾氏は当時を振り返るがこれだけの大ヒットを生み出した背景には、一体どんな販売戦略があったのだろうか?今では、男女問わず幅広い層に支持されている今作品だが、そこには「まずは原作を知っているであろう40代以上の男性にアピールしたかった」という思いがあったという。そこで、全国を先駆け、ビジネスマンが多く訪れる丸善日本橋店で先行発売を行った。

丸善日本橋店の店長は以前から知り合いで、本を見る目も確か。まずは彼にこの作品を読んでもらおうと思ったところ『すごく良い作品なので、先行発売しましょう』ということになりました。ご存知の通り、日本橋はビジネスマンが多い。まずは原作を知っているであろう40代以上の男性にアピールしたいという狙いもありましたね。100冊以上入れていただいたのですが、すぐに良い反応があり、そこから広がっていきました」(鉄尾氏)

 発売されると狙い通り、ミドル世代の男性を中心にすぐに反響を集めた。さらに原作を愛読していた書店員の目に留まり、代官山蔦谷書店、紀伊国屋書店などで特設コーナーが展開され、読者層がさらに拡大行く。支持してくれた書店員たちがコーナ開設や手書きのPOPなどで売り場から盛り上げてくれたのも大きかったという。女性から火がついて男性へと広がるヒットパターンが多い中、あえて"原作を知っている40代男性" をピンポイントでターゲットにしたことで、熱量の高い反応を集め、評判が口コミとなり、さらに若い世代へと広がっていったのだろう。

「最初は40代以上の男性が中心だったんですが、その後は10代、20代の若い人たちに広がった印象があります。『子供に読ませたい』という方も多く、小学生から読者ハガキが届くことも増えましたね。コペルくんにはお父さんがいなくて、その代わり"おじさん"といろいろな話をする。その"おじさん"の役割を担っているのが、この本だと思うんです。親が子供に対して人生について語ると「うざいな」ということなりがちですが、この本を渡して「読んでみたら」と言えば伝えやすいかもしれない。そういう橋渡しができているのかもしれないですね」(鉄尾氏)

また、

政治、ビジネス、スポーツなど、さまざまなところでモラルについて考えさせられる出来事が頻発している現在の日本。自らの生き方を真摯に問いかける『漫画 君たちはどう生きるか』がヒットした背景には、こうした社会情勢も関係しているのだろう。

 「バブルの時代であれば、景気が良く、毎日が楽しいという人が多かったわけで、こういう本を出して『どう生きようが、余計なお世話だ』と思われ、売れなかったかもしれない。今は不安も多い時代だし、だからこそ『どう生きていくべきか』というメッセージが突き刺さったのかなと」(鉄尾氏)

「最少」と「最多」

『ハフィントン・ポスト』(『朝日新聞』)の記事;


2018年06月02日 13時02分 JST | 更新 2018年06月02日 13時02分 JST
2017年の出生数、過去最少94万6000人 人口は最大減、要因は?
出生率の低下や人口減に歯止めはかかっていない

朝日新聞社提供


17年の出生数、過去最少94万6千人 人口は最大減

 2017年に国内で生まれた日本人の子どもの数(出生数)は94万6060人で、統計がある1899年以降、最少だった。逆に、人口の高齢化を反映して死亡数は134万433人と戦後最多。出生数から死亡数を引いた自然減は39万4373人となり、統計開始以降で最大の減少幅だった。厚生労働省が1日に発表した人口動態統計で明らかになった。


 出生数は2年連続で100万人を割り込み、前年より3万918人減った。要因の一つに、団塊ジュニア世代(1971〜74年生まれ)以降、出生数の減少傾向が続き、親になる世代が減っていることがある。25〜39歳の女性人口は前年比で26万2964人(2・5%)減少しており、厚労省では「こうした傾向は今後も続くので、出生数の減少は避けられない」とみる。

 さらに、女性が一生に産む子の数を示す合計特殊出生率も1・43で、前年から0・01ポイント下がり、前年の人口を維持するのに必要とされる2・07を大きく下回った。年齢別では35〜49歳では微増だったが、34歳以下は下がった。都道府県別では沖縄県が1・94で最も高く、宮崎県の1・73、島根県の1・72が続いた。最低は東京都の1・21だった。

 一方、17年の65歳以上の高齢者は前年から約56万人増えて3515万人。人口の28%を占め、5年前から4ポイント上がった。死亡数を5歳きざみの年齢別で前年と比べると、70歳以上の全ての年齢層で増えた。70歳以上の死亡数は111万6476人で全体の83%だった。

 安倍政権は15年に「希望出生率1・8」を打ち出し、若者世代の雇用安定策や結婚支援策などに着手。子育てと仕事の両立のために保育園の待機児童を20年度末までにゼロにすることも掲げた。しかし、出生率の低下や人口減に歯止めはかかっていない。(西村圭史)

朝日新聞デジタル 2018年06月01日 22時35分)
https://www.huffingtonpost.jp/2018/06/01/number-of-births_a_23449128/

「出生数」が「過去最少」であるのに対して、「死亡数」は「戦後最多」。これは平和時においては最多ということなのだろうか。
日本の「出生数」については、例えばhttp://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20111024/1319417685 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20150105/1420473043 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20150620/1434771856 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160227/1456541595 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20180220/1519084033なども参照のこと。

Lamb on the rocks

“Lamb on the rocks saved after four days” http://www.bbc.com/news/uk-england-cornwall-44347000


この羊はあのオハイオ州のラッキーな犬*1よりもさらに「幸運」だといえるだろう。
或る羊が英国コーンウォールの荒海に面して立つ高さ76mの断崖絶壁から転落したが、そのまま海へとは落ちず、出っ張った小さな岩の上で4日間過ごし、遂に現地時間6月2日、海側から救出され、Luckyと名づけられた。

グアテマラ火山

布哇のキラウエア火山の噴火*1もまだ終息していないか。


“Guatemala volcano: Several dead as Fuego volcano erupts” http://www.bbc.com/news/world-latin-america-44350974
“Guatemala volcano eruption: Several dead as Fuego spews ash across capital and lava river runs into village” https://www.yahoo.com/news/guatemala-volcano-eruption-several-dead-002933574.html


グアテマラ*2のVolcan de Fuego*3が噴火。少なくとも6名が死亡し、怪我人も20名に達しているという。
Volcan de Fuegoはグアテマラの首都グアテマラ・シティの南西40kmの場所にあるので、首都は当然ながら火山灰に見舞われている。ところで、Volcan de Fuegoだけど、fuegoというのは英語でいえばfire、つまり「火」を意味する西班牙語なので、Volcan de Fuegoを訳せば「火山」。そのままじゃん。
See also https://www.volcanodiscovery.com/fuego/news.html

弥生のゆるさ

齋藤亜矢*1弥生人と絵文字」『図書』(岩波書店)830、2018、pp.46-49


少しメモ。


総じて、縄文の造形物は、とにかくエネルギッシュで、「なんだこれは!」と人を惹きつけるものがある。なにやら謎めいた深い意味を予感し、用途を超えた「表現」を感じさせるのだ。
それに比べると弥生の土器は、アートいうよりはデザインに近いかもしれない。表現のための形ではなく、使うための形。それも用の美を追求したミニマムなデザインという印象だ。(pp.46-47)

だから弥生人の絵を見て最初はギャップを感じた。実用的なものを好むクールなイメージとは異なり、親近感がわくような「ゆるい」絵なのだ。
たとえば人物の表現。頭は丸、体は四角、手足は棒といった、いわゆる棒人間だ。顔が描かれているものも、点三つで目と口、そこに横棒を足して眉毛という調子。それも下がり眉の気の抜けた表情だったりする。
そんな絵が、一部の土器や石器、木器、青銅器に描かれている。ベンガラの赤など顔料を使ったものもあるが、線刻が圧倒的だ。人間、シカ、ヘビ、魚などの動物のほか、想像上の動物である龍も描かれている。(p.47)

かれらの絵を「ゆるい」と感じるのは、それが絵文字やマンガを思わせるからだろう。きわめて記号的な絵なのだ。「見たもの」を描く写実的な絵ではなく、「知っているもの」を描く記号的な絵。人間には、頭があって体があって、手が二本、足が二本、というような、頭のなかにある表象スキーマ(その対象についての一連の知識)を表している絵だ。
ずっと古い旧石器時代のショーヴェ洞窟の壁画の方が、写実的でデッサンに近い。だからといって弥生人の絵が稚拙だとか原始的だとかいうわけではない。そもそも弥生人クロマニョン人も、同じホモ・サイエンスであるわたしたちと脳の構造や認知的な能力に違いはない。
弥生人の絵は、できるだけ手数を少なく、最小限のタッチで「なにか」を表そうとしているように見える。それも、現代のわたしたちと同じようなやりかたで記号化しているのだ。対照的に、写実的な絵の場合は「どんな」も細かく描写され、含まれる情報量が多い。でもそのぶん描くのに時間がかかるし、技術も必要だ。だから「なにか」を伝えるためには、記号的な絵の方がずっと効率がいい。土器や青銅器の曲面を削って描くのにも、その方が適している。(ibid.)

週休1日に感謝感激せよ?

キャリコネ編集部「高プロ推進する竹中平蔵「適用する人増やさないと日本経済は強くならない」 ネットでは批判殺到「二度と騙されない」」https://news.careerconnection.jp/?p=54714


高度プロフェッショナル制度*1衆議院を通過した前日に、NHKの番組に出た竹中平蔵*2が「高プロ」制度における「4週間で4日以上かつ年間104日の休日確保」という規定について、「年間104日の休みというのはほとんど完全週休2日制です。4週間で必ず4日取るというのはものすごく厳しい規制です」と述べたという。竹中によると、週に1日休んでいる労働者は、それは会社が相当に無理をした結果なのだから、西城秀樹以上に「感激」しなければいけないということになる。「週休2日制」であればなおさらだ。
さて、「高プロ」が少子化を促進する可能性;


蓑輪明子「働き方改革 #高度プロフェッショナル制度女性差別助長し子育て介護抱えた男性を低賃金に追いやる」http://blogos.com/article/299334/


そもそも「高プロ」の「必要性の根拠」がアレだったという話;


リテラ編集部「またインチキ発覚!「高プロ」の必要性の根拠はでっち上げだった! たった“十数人”のヒアリングは企業の仕込み」http://lite-ra.com/2018/05/post-4042.html


高プロ」についての基本;


上西充子「労基法改正をめぐるNHKの論点隠しで隠されているもの」https://news.yahoo.co.jp/byline/uenishimitsuko/20150406-00044580/
上西充子「高度プロフェッショナル制度「きほんのき」(1):「労働時間の規制を外す」→でも労働者は時間で縛れる」https://news.yahoo.co.jp/byline/uenishimitsuko/20180601-00085937/


猪野亨*3高度プロフェッショナル制度高プロ)が労働そのものを否定する 国全体が不幸になる」http://blogos.com/article/300687/ *4


曰く、


高プロの対象となっているのは、相応の高度な労働を担う労働者ということになりますが、賃金を下げるが働けと言っているようなもので、これではこのような職種を目指す人はいなくなってしまいます。今、働かされている労働者は与えられた職務ということで「忠実」に働いてくれるかもしれません。しかし、絶対に後に続く人たちは出てきません。早晩、先細りになります。

 昨今、公務員志向とか安定志向が強くなってきている中で、こうした労働に耐えうる層は非常に限定的になっていくだろうし、例えば何も無理をしなくてもスマホさえされば何もいらないよ、なんて言われてしまったら、労働意欲なんてまるでなくなってしまいます。
 労働に自己実現を見いだせなくなってきたのは、働いても仕方ないという風潮が生み出されてきた背景に労働に対する適正な評価がなされず、それに見合った収入が得られないということになれば、誰もそういった職種を目指すことはなくなるということです。

岩井克人『会社はこれからどうなるのか』から少し抜書きをしておきたい。

産業資本主義時代においては、おカネは絶対的な支配力をもっていました。おカネをもってさえいれば大規模な機械設備を手に入れることができ、機械制工場を設立しさえすれば、安価な労働者を大量に雇って、ほぼ自動的に一定の利潤を確保することができたからです。おカネをもつものが資本家となり、おカネをもたざるものが労働者となり、そのあいだに支配と被支配の関係が成立していたわけです。
ところが、ポスト産業資本主義になると(略)もはや機械制工場のオーナーであるだけでは、利潤は得られなくなっています。なんとか差異性を見つけだしたり創り出したりしなければ、利潤を生み出すことはできません。たんにおカネをもっているだけでは利潤が得られないのです。おカネの支配力が弱まってしまったのです。まさにおカネの支配力が弱まってきたからこそ、おカネの所有者は、わずかな利幅でもよいから、すこしでも有利な投資先を求めて、世界中を動き回らざるをえなくなったのです。(pp。217−218

機械や設備や建物、さらにはコンピュータ機器やソフトウェアといった有形資産は、おカネで買うことができます。また、特許やブランド名やデータベースといった知識資産の場合も、それをおカネで買うことができます。実際、具体的な形をもたないといっても、これらの知識資産はすべて形式化されて、ヒトから切り離すことができますから、原則的にはモノとして市場で売り買いすることができるはずです。
これにたいして、同じ知識資産のなかでも経営者の企画力や技術者の開発力や従業員のノウハウなどは、おカネで直接買うことはできません。なぜならば、それらはすべて人間の頭脳の内側に蓄積された知識や能力であるからです。
ヒトとは、自分以外の何人にも支配されない自立した存在です。そして、そのような自立性の究極的な拠り所は、自由意思の存在です。ヒトをヒトたらしめているこの自由意思があるかぎり、ヒトが頭脳のなかにこれまで蓄積してきた知識や能力をどのように蓄積していくかを、外部から完全にコントロールすることは不可能です。たとえ、そのような知識や能力を体現しているヒトをドレイにしたとしても、不可能なのです。
それゆえ、おカネができる唯一のことは、ヒトに知識や能力を自主的に発揮してもらうために、さらにはヒトに知識や能力を自主的に蓄積してもらうため、様々なインセンティブ(動機)を提供することだけです。成績に応じたボーナスを与えたり、昇進制度や退職制度を工夫したり、自由な勤務時間や仕事の自主管理などのような知的作業に適した環境を整えたり、会社の社会的なイメージを高めたりすることだけなのです。
(略)おカネで買えるモノよりも、おカネで買えないヒトのなかの知識や能力のほうがはるかに高い価値をもちはじめているポスト産業資本主義においては、おカネの重要性が急速に下がっているのです。それは、当然、会社にたいするおカネ(資本)の究極的な提供者としての株主の重要性が、会社のなかで急速に低下していることを意味することになります。そして、そのことは、会社とは株主のものでしかないというアメリカ的な「株主主権」論の正当性が、いままさに疑われ始めているということを意味することにもなるのです。(pp.273-275)
さて?
会社はこれからどうなるのか

会社はこれからどうなるのか

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