自傷から他傷へ

「「女の子が苦しむ顔が見たかった」…小3女児殺害 39歳男のゆがんだ願望」https://www.fnn.jp/posts/00318010HDK



14年前、岡山県津山市で、当時小学3年生の筒塩侑子ちゃんが自宅で胸や腹など数カ所刺され殺害された事件。

30日、岡山県警は別の殺人未遂事件で岡山刑務所に服役中だった勝田州彦容疑者39歳を殺人の疑いで逮捕した。

ということなのだが。

勝田容疑者とはどんな人物なのか?
容疑者を知る人は 「外見はすごくいい人ですよ。愛想いい。びっくりしています。普段は乱暴な感じしませんから」と語った。

しかし、過去に起こした事件の裁判記録などから浮かび上がってきたのは、腹部を刺すことへの執着だ。

勝田容疑者の裁判記録を見ると、
「自分の腹を刺して血が出てくるのを見ると落ち着いた」とある。

ストレスを感じると自傷行為を行うようになったという勝田容疑者。
血に染まる自分のシャツを見て、少女が腹部から血を流しているのを想像し、性的興奮を覚えていたという。

しかし、自傷行為をしすぎたため入院。
その時、医師から『もう刺すことはできない』と告げられると、現実の少女の腹部を刺したいと考えるようなり、少女を狙った事件を起こすようになったという。


勝田容疑者が最初に事件を起こしたのは2000年。
下校途中の小学5年生の女児女の子の腹部を殴るなど、女児6人への暴行わいせつ行為で執行猶予の判決を受けた。

その後、精神科に通院するが、途中で通うのをやめている。

この4年後、侑子ちゃん殺害事件が発生。

そして、2009年には兵庫県姫路市などで6歳の女の子から18歳の女子高生ら少女5人に対し、腹部を殴ったりドライバーの先で突く事件を起こし、懲役4年の判決を受けた。

さらに2015年5月に兵庫県姫路市で、当時中学3年生の女子生徒の腹を刃物で複数回刺し、殺人未遂容疑で逮捕され懲役10年の実刑判決を受けた。

これらの事件について勝田容疑者は「女の子の苦しむ顔が見たかった」と語っていたという。

かなり前のことだけど、昭和30年代くらいまでの日本の所謂〈変態〉系のサブカルチャーにおいて、〈切腹マニア〉というのがかなり存在感を持っていたということを知ったのだった。某氏が教えてくれたのだが、あの三島由紀夫も〈切腹マニア〉のサブカルチャーに関係しており、あの市ヶ谷の自衛隊での自決を衝き動かしたのは同性愛や右翼思想だけではなかったらしい*1。それで、SMは普通のカップルが自らの性生活に取り入れるほどメジャーに近づいた一方で、 切腹マニアについては全然聞かなくなっちゃったけど、何故なんだろうと疑問に思っていたのだ。
勝田は切腹マニアと呼んでもいいと思う。ただ、彼の性的快感の仕方が切腹マニア一般の快楽と一致しているのかどうかはわからない。最初の段階では、「少女」に想像的に同化している。「腹」から「血を流している」のは自分であって自分ではない。これって、キリスト教文化圏のマゾヒストが十字架上の耶蘇に想像的に同化して快感を得るのと似ているか(Cf.立花隆アメリカ性革命報告』)*2。しかしながら、医師の一言によって、自傷から他傷へ、想像上の「少女」からリアルな「少女」へ転換した。
アメリカ性革命報告 (文春文庫 (330‐1))

アメリカ性革命報告 (文春文庫 (330‐1))

勝田の「腹」への「執着」」についてはどんな解釈がなされているのだろうか。そのライフ・ヒストリーの中で「腹」に纏わるトラウマがあったのかどうか。

衆院通過


これまで「働き方改革関連法案」については全然言及していなかったのだが。
朝日新聞』の記事;


働き方改革関連法案、衆院を通過 参院で審議へ
2018年5月31日14時17分


 安倍政権が今国会の目玉法案と位置づける働き方改革関連法案が31日午後、衆院本会議で採決された。自民、公明両党と、修正案をまとめた野党の日本維新の会希望の党を含む賛成多数で可決し、衆院を通過した。6月4日にも参院で審議入りする。立憲民主党などの野党は引き続き、高度プロフェッショナル制度高プロ)導入の削除を求めていく構えだ。

 与党は当初、29日の衆院本会議で採決する方針だった。しかし、25日の衆院厚生労働委員会で与党が採決を強行したことに、立憲などの野党が反発。与野党国会対策委員長が協議した結果、30日に厚労委で追加の審議を行い、31日の本会議で採決することで合意した。
https://www.asahi.com/articles/ASL5Z769QL5ZULFA03H.html

本会議の前の厚生労働委員会が酷かったらしい。


「根拠の存在しない法案を強行採決する愚行」http://www.ksmgsksfngtc.com/entry/kyokosaiketu-hatarakikata


「議会制民主主義の根幹を破壊すると言っても過言ではない事態」が起こったという。


5月25日になって発覚したデータの誤りについて、衆議院厚生労働委員会で国民民主党岡本充功議員が質問に立ち、問い質した。


 それに対する厚生労働省の山越労働基準局長や加藤大臣の答弁は、まるで要領を得ないものであった。しかも、間違いについて修正した資料などは提出されなかった。


 これだけでも大きな問題だが、さらなる問題は岡本議員の質疑時間が経過したとして、岡本議員が質問しようとするのを遮り、高鳥修一委員長が質疑を打ち切った上で採決へと移ったことである。


 法案の立法事実を構成するはずデータに誤りがあり、それについての修正が示されず、その点についての質問がなされている最中に、その質問が打ち切られる。法律の合理性を支えるとして提示された「事実」に間違いがあることが明らかであり、それが指摘されている最中に、法案の採決が強行されたのである。


 そもそも法案成立という結論ありきであったということで、立法事実を構成するはずのデータなど、さして重要ではなかったということなのだろう。


今回の働き方改革関連法案については、労働時間という様々な場面で収集が行われてきたデータが焦点となった。国民の労働の実態に関するデータが様々な場面で収集されてきたと言える。そのデータが現政権の都合の良いように改竄・捏造され、その改竄や捏造が明らかになっても、そんなことは大した問題ではないとばかりに法案採決が強行されたのだ。事実に基づいて意思決定を行い、法律を制定するという近代国家の前提を捨て去さる瞬間を私たちは目にしたのである。
See also
読む国会*1自民党はデータと事実を捨て、近代国家を放棄する覚悟があるか ー 高度プロフェッショナル制度の委員会採決を巡って」http://www.yomu-kokkai.com/entry/kohpro-saiketsu


高度プロフェッショナル制度」を巡って;


嶋崎量「本当は存在しない「高度プロフェッショナル制度」〜欺瞞性を曝く〜」https://news.yahoo.co.jp/byline/shimasakichikara/20180530-00085853/
佐々木亮*2高プロ制度の解説をします」https://news.yahoo.co.jp/byline/sasakiryo/20180330-00083362/
佐々木亮高プロは欠陥制度なので撤回した方がいい。」https://news.yahoo.co.jp/byline/sasakiryo/20180518-00085367/
佐々木亮細野豪志議員のブログを題材にして「高度プロフェッショナル制度」を解説してみた。」https://news.yahoo.co.jp/byline/sasakiryo/20180527-00085709/

Battle of everomore?

Led Zeppelin's Jimmy Page and Robbie Williams continue planning battle” http://www.bbc.com/news/uk-england-london-44290922
Kevin Rawlinson “Jimmy Page wins delay in permission for Robbie Williams to build pool” https://www.theguardian.com/music/2018/may/29/guitarist-wins-delay-in-permission-for-robbie-williams-to-build-pool
AP “No stairway to basement heaven just yet for British singer” http://www.bbc.com/news/uk-england-london-44290922


ギタリスト、ジミー・ペイジ*1と歌手のロビー・ウィリアムズ*2の自宅は隣同士。ロビー・ウィリアムズが自宅の地下にプールとジムを建設しようとしたことから、両者の間で、倫敦のケンジントン区及びチェルシー区の都市計画委員会を舞台にバトルが勃発した。ジミー・ペイジは建築許可を阻止しようとしている。彼の家(Tower House)は重要文化財にも指定されている19世紀の建築で、隣の家の工事はTower Houseに多大なるダメージを与える虞があるという。なお、建物を守るために、ジミー・ペイジは自宅ではアコースティック・ギターしか弾かないという。
さて、APの記事のタイトルには「天国への階段」が埋め込まれているのだが、本文には”Whole Lotta Love”(邦題「胸いっぱいの愛を」)も使われている。

Led Zeppelin 4: Zoso

Led Zeppelin 4: Zoso

Led Zeppelin II

Led Zeppelin II

河合隼雄『子どもと悪』

子どもと悪 (今ここに生きる子ども)

子どもと悪 (今ここに生きる子ども)

河合隼雄『子どもと悪』*1を数日前に読了。


I 悪と創造
II 悪とは何か
III 盗み
IV 暴力と攻撃性
V うそ・秘密・性
VI いじめ
VII 子どもをとりまく悪


あとがき

本書のメッセージを一言で言い表すと、「教師や親が悪を排除することによって「よい子」をつくろうと焦ると、結局は大きい悪を招き寄せることになってしまう」(p.37)ということだろう。また、「悪を行なってはならないということは、悪の規準が文化によって差はあるしろ、いかなる文化においても強調されてきたこと」でありながら、「どの文化でも悪人が絶えて無くなるということはない」が(p.46)、それは「人間の心に本来的に悪が存在しているから」だけでなく、「人間生活にある種の意義」、「不思議な両義性」(p.47)を持っているからではないか。このような関心の下で、「創造性」、「盗み」、「うそ」、「秘密」、「いじめ」等が語られていく。最後の「子どもをとりまく悪」は「子ども」が抱える「悪」ではなく、「大人の「善意」がもたらす悪」(p.202)。

3 moments

Age of Anger: A History of the Present

Age of Anger: A History of the Present

Pankaj Mishra*1 Age of Anger: A History of the PresentのPenguin版「まえがき」に曰く、


I started thnking about this book after the Indian elections of 2014 when voters, including my own friends and relatives, elected Hindu supremacists to power. I finished writing it during the week in 2016 in whichBritain voted to leave European Union*2. It went to the printers in the week that Donald Trump was elected president of the United States*3. Each of these earthquakes revealed fault lines that I felt had been barely noticed over the years, running theough inner lives as well as nations, communities and families. (…) (p.ix)

コペルは戦場に行った?

君たちはどう生きるか (岩波文庫)

君たちはどう生きるか (岩波文庫)

梨木香歩「今、『君たちはどう生きるか』の周辺で」『図書』(岩波書店)832、2018、pp.2-5*1


曰く、


次第に大きくなる軍靴の音に、なんとか青少年の精神を守ろうと、山本有三石井桃子吉野源三郎等に声をかけて始めた「日本少国民文庫」の、最後の巻として、一九三七(昭和一二)年、『君たちはどう生きるか』は刊行された。このとき十五歳の設定のコペル君は(作品発表年が、彼の作品に登場する年齢の年だと単純に仮定し計算すると)、一九二二(大正一一)年生まれだ。石井桃子の言う「失われた成長期」の害を被る、まさに直前の世代である(吉野源三郎らがこれほど思いをかけたまさにこの世代は、その後真っ先に戦争に駆り立てられる運命となるのだが……)。(p.5)
石井桃子、1951年に曰く、

このごろ、若い人たちを見たり親類の子どもをあずかったりしてみると、「むかし」の人間なら、常識で考えられないようなことをしたり、言ったりする。そんなとき、私は、この人たちは、からだは一人前でも、精神的には、栄養失調や奇型だと思った。そして、それは、その人たちのせいではない(後略)
(「新鮮な子供の感受性」、cited in p.4)
最近亡くなった方々だと、金子兜太*2水木しげる*3やなせたかし*4などの世代に重なる。『君たちはどう生きるか』の続篇を作るとしたら、当然「コペル君」が召集を受け・戦場に赴く話が中心にならざるを得ないだろう。「コペル君」はどんな戦争体験をしたのだろうか。他方、野坂昭如*5永六輔*6大橋巨泉*7石井桃子が「精神的には、栄養失調や奇型だ」と嘆いた世代に当たる*8
梨木さんの文章をさらに写しておく;

我々は共有する世相への不安とは別のところで、当時の社会がまだ保持していた、父性、母性の濃密さ……この作品に滲む、「子どもたちを守りたい」という「育む力」の強さにもまた、密かに圧倒されているのではないだろうか。昨今の子どもたちの置かれている(ネット上で写真が売買されているなどの)殺伐とした状況のなかで、コペル君の「立派な人間」になろうとする努力や、子どもや若いひとに積極的に温かい視線を送り、関心を持ち続け、手を差し伸べる大人たちに対する、ノスタルジーを超えた潜在的な「慕わしさ」も、この「流行」の背後にはあるような気がしてならない。(p.5)
タイトルは『ジョニーは戦場へ行った』から。
ジョニーは戦場へ行った (角川文庫)

ジョニーは戦場へ行った (角川文庫)

ジョニーは戦場へ行った [DVD]

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JRの反応

承前*1

Shino Tanaka「女性を狙う『ぶつかり男』が新宿駅に出没。JR東日本が警戒「絶対にやめてほしい」」https://www.huffingtonpost.jp/2018/05/31/butsukariotoko_a_23447463/


新宿駅のタックル男について。


動画はYouTubeTwitterなどで広がり、FNNニュースなどが報じたことで*2JR東日本も事情を把握した。

新宿駅を管轄するJR東日本東京支社広報部によると、動画を受け、駅構内のこうした迷惑行為について、警備員や駅員らに注視するよう警戒を指示をしたという。

この動画について担当者は「故意にぶつけているように見える。ほかのお客様へ迷惑であり、当たり所が悪ければ転んだり壁に当たったりするなど危険な行為のため、絶対にやめてほしい」と話した。

トラブルが発生するなど、状況によっては警察を呼んで判断を仰ぐことになるという。

*1:http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20180527/1527436801

*2:「女性狙う「ぶつかり男」を異例警戒 JR東日本が指示」https://www.fnn.jp/posts/00393143CX