John Giblin

承前*1

フランス・モンクマンが逝ったのに約1週間先立って、5月14日、ベーシストのジョン・ギブリン*2が他界していたのだった。享年71歳。


Martin Kielty "Bassist John Giblin Dead at 71" https://ultimateclassicrock.com/john-giblin-dead/
Seán Twomey*3 “Remembering bassist John Giblin” https://www.katebushnews.com/2023/05/16/remembering-bassist-john-giblin/
「数多くのアーティストと共演 ロンドンの著名なスタジオ・ミュージシャン ベーシストのジョン・ギブリン死去」 https://amass.jp/166741/


ジョン・ギブリンはセッション・ベーシスト*4として、ケイト・ブッシュのほかに、ピーター・ゲイブリエルフィル・コリンズエリック・クラプトンアニー・レノックス、さらにはポール・マッカートニージョン・レノンとも仕事をしているが、ジョン・ギブリンということで真っ先に想起されるのはやはりケイト・ブッシュだろう。彼は先ずNever for Everに収録された「バブーシュカ」と「呼吸」でベースを弾き、さらにその後のThe Sensual WorldThe Red ShoesAerialDirector’s Cut50 Word for Snowに参加し、2014年のライヴBefore the Dawn*5でもベースを弾いている。ケイトとジョン・ギブリンが知り合ったのは、彼女が1979年にピーター・ゲイブリエルのサード・アルバムに収録された”No Self Control”にコーラスで参加したとき。

Never Forever

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The Sensual World

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The Red Shoes

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Director's Cut

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50 Words For Snow

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BEFORE THE DAWN

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Peter Gabriel 3: Melt

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ケイト・ブッシュによる追悼文;

JOHN


Everyone loved John. He was a really beautiful man in every sense of the word. Everybody wanted to work with him because he was such a great talent and everyone wanted to be his friend because he was such a wonderful person.
I loved John so very much. He was one of my very dearest and closest friends for over forty years. We were always there for each other. He was very special. I loved working with him, not just because he was such an extraordinary musician but because he was always huge amounts of fun. We would often laugh so much that we had to just give in to it and sit and roar with laughter for a while. He loved to be pushed in a musical context, and it was really exciting to feel him cross that line and find incredibly gorgeous musical phrases that were only there for him. He would really sing. It was such a joy and an inspiration to see where he could take it.
We’ve all lost a great man, an unmatchable musician and I’ve lost my very special friend. My world will never be the same again without him.
Kate
https://www.katebush.com/news/john

Joe Taysom "Kate Bush pays tribute to bassist John Giblin following death" https://faroutmagazine.co.uk/kate-bush-pays-tribute-to-bassist-john-giblin-following-death/

白海豚再び

AFP “Suspected Russia-trained spy whale reappears off Sweden’s coast” https://www.theguardian.com/world/2023/may/29/suspected-russia-trained-spy-whale-reappears-off-swedens-coast


2019年に諾威沿岸に現れ、露西亜海軍によってスパイ目的で訓練された者だと推測された「シロイルカ(belga whale)」*1が今度は瑞典南東部の海岸に現れた。彼はHvaldimirと名づけられている。hvalは諾威語で鯨、-dimirは露西亜っぽさを表している。ウラディミール・プーチンとか。


“We don’t know why he has sped up so fast right now,” said Sebastian Strand, a marine biologist with the OneWhale organisation*2, adding that it was particularly puzzling because the whale was moving “very quickly away from his natural environment”.

“It could be hormones driving him to find a mate. Or it could be loneliness, as belugas are a very social species – it could be that he’s searching for other beluga whales.”

Strand said the whale, believed to be 13-14 years old, is “at an age where his hormones are very high”.

The closest population of belugas is located in the Svalbard archipelago, which lies midway between the northern coast of Norway and the north pole.

The whale is not believed to have seen a single other beluga since arriving in Norway in April 2019.

Hvaldimir君が露西亜軍から脱走した経緯はわからない。つがう相手を求め、ホルモンの導きのままに外海に飛び出したのだろうか?

露西亜による黒海における海洋哺乳類の軍事利用については、


Lauren Aratani “Russia deploys trained dolphins at Black Sea naval base, satellite images show” https://www.theguardian.com/world/2022/apr/27/russia-black-sea-military-dolphins-crimea


*3

Ari Boulogne

Caroline Piquet et Jean-Michel Décugis “Ari Boulogne retrouvé mort à Paris : sa compagne mise en examen pour « homicide involontaire »” https://www.leparisien.fr/faits-divers/ari-boulogne-retrouve-mort-sa-compagne-mise-en-examen-22-05-2023-XN36NTO5ORDVVFNFVULZHA2SPM.php
Solène Delinger “Mort d'Ari Boulogne : sa compagne Yasmina S. mise en examen pour homicide involontaire” https://www.europe1.fr/people/mort-dari-boulogne-sa-compagne-yasmina-s-mise-en-examen-pour-homicide-involontaire-4184695


5月20日、写真家のアリ・ブローニュ氏*1が巴里のアパルトマンで死亡しているのが発見された。享年60歳。死因はヘロインのオーヴァードーズだとされている。また、警察当局は彼のパートナーでヤスミナ・Sという58歳の女性を「過失致死=非意図的殺人」の廉(危険な状態にある人物を助けなかった疑い)で拘束している。
ブローニュ氏は(後にロック・シンガーとして知られることになる)ニコ*2と俳優のアラン・ドロン*3の間の子ども。アラン・ドロンはアリのことを認知しなかったが、ドロンの母親に引き取られ、養子として育てられた*4

数学教師の死

Adrian Horton “Chas Newby, one-time Beatles bassist, dies at 81” https://www.theguardian.com/music/2023/may/23/chas-newby-one-time-beatles-bassist-dies
Beatles Bassist Chas Newby Dead at 81” https://www.beatlesstory.com/news/2023/05/23/chas-newby/


5月22日、英国で或る元数学教師が81歳で亡くなった。チャス・ニュービー*1というその男は1960年に(リンゴ・スター加入以前の)ビートルズでベースを弾いていたのだった。数回のライヴに参加した後、彼はジョン・レノンの慰留にも拘らずバンドを辞して大学に戻り、卒業後は高校の数学教師として生涯を送った。因みに、チャスはジョンが1950年代に初めて結成したバンド、クォリーメンのメンバーでもあった。こうして、(チャスと同様に)左利きのポール・マッカートニーが ベースに転向することになる。


「5人目のビートルズ」というお題は過去に何度か取り上げているのだけど*2、これまで チャス・ニュービーに言及したことはなかった。申し訳ない!

法曹へのパッション

山下泰平*1「五〇年間ずっと嘆き続けながら問題を放置した日本社会」https://cocolog-nifty.hatenablog.com/entry/2023/05/23/172400


所謂「苦学」という問題。


そもそも働きながら学ぶ近代的な苦学が発生したのは、およそ明治二五(一八九二)年あたりのことだ。厳密に検証すると明治二〇年あたりにも苦学はあり微妙なところもあるのだが、そんなことを厳密に検証している暇人などこの世に存在しないため、明治二五(一八九二)年に苦学が発生したということにしておこう。それから昭和一〇年代まで、つまり五〇年の間、苦学は無理であり続けた。なぜ苦学にまつわる問題が放置されていたのかといえば面倒クセーからで、とにかく苦学は軽く雑に扱われていた。

雑に扱われていた実例としては、各々の時代で様々な人間が「〜年前なら苦学も出来たのだが……」などと、表面上は嘆息していることを挙げることができる。「10年前には出来た」という記述を信じ、10年前の資料に当ってみると、そこでもまた「〜年前なら苦学も出来たのだが……」と語られているといった状況で、五〇年ほど「〜年前なら苦学は出来た」と語られ続けているのである。つまり「〜年前なら苦学は出来た」の『〜年前』というのは調査をした結果ではなく、あくまで語っている人間の感覚で、なんら根拠のない発言だということになる。

さて、戦後社会において「苦学」といえば、司法試験受験生なのではないかと思った。
立憲民主党の藤原規眞氏はかつて司法試験のために七浪して、その間「日雇い労働者」をしていたという*2藤原氏は8年目には目出度く司法試験に合格したようだけど、私は司法試験受験歴二桁年という人たちをよく知っていた。その人たち*3の多くはそこそこ以上の大学を卒業し、それなりに安定した企業に就職したにも拘らず、受験のために職を辞し、不安定なアルバイトに身を投じていた。また、この人たちはリッチになりたいとか権力を握りたいというような野望に燃えているというわけではなく、その一方で(藤原氏のように)社会正義に燃えているというわけでもなかった。あるのは、ただただ疱瘡もとい法曹へのパッションであるように思えた。直接付き合いはなくても、赤線に塗れた法律の参考書を電車の中で目の色を変えて読んでいる人を電車の中とかで見かけたことがある人は多いのでは? 
にも拘らず、司法試験受験生というのは社会の中で隠された存在になってきたのではないか? 研究の対象としても、小説や映画などのキャラクターとしても。数が違うと言われればその通りだけど、大学受験生とは対照的である。司法試験受験生をウリにしたミスター梅介という藝人がいたけれど、これも1980年代の話だ。

雇用関係の問題

Via
金井かおる*1「「カエルの鳴き声がうるさい」田んぼの持ち主に苦情→「理不尽すぎる」「無茶言う人だ」驚きの声広がる」https://news.yahoo.co.jp/articles/6faa849f726d11510d124df3daeddade6ae993d1


まあ、「田んぼの持ち主」としては、「カエル」は弊社と雇用関係にございませんとだけ言えばいいのではないかと思う。
茂木健一郎*2のコメントも退屈なくらい真っ当。
まあ、こういう「近隣住民」は除夜の鐘がうるさいといって*3、近所の寺にクレームをつけている可能性も高い?

林文月

『フォーカス台湾』の記事;


作家の林文月さん死去 89歳 源氏物語枕草子を中国語に翻訳/台湾
5/27(土) 16:05配信



中央社フォーカス台湾

台北中央社)作家で国立台湾大学名誉教授の林文月さん*1が26日、米カリフォルニア州で亡くなった。文筆家らで構成される団体、中華民国筆会(ペンクラブ)が27日、フェイスブックで明らかにした。89歳。日中比較文学に精通し、生前は源氏物語枕草子を中国語に翻訳した。

林さんは1933年、中国・上海の租界で生まれた。幼少期は日本の教育を受け、台湾に来て初めて中国語による教育を受けたとされる。台湾大学中国文学科を卒業し大学院に進学。58年から台湾大で教壇に立ち、69年には京都大学人文科学研究所に留学した。93年に台湾大を退職して以降は、米国で暮らしていた。

創作活動では70年前後に「京都一年」と呼ばれる散文のシリーズを手掛けた他、数々の文学賞を受賞。作品が中学校や高校の教科書に収録されたこともある。2014年には日本政府による秋の外国人叙勲で旭日中綬章に選ばれた。

筆会は林さんについて、作品は温かみがあり美しく、人柄を表していたとコメント。筆会の秘書長で淡江大学中国文学科の楊宗翰助教は、かつて林さんが「中国文学科で学ぶ人」と題した文章を発表し、当時役に立たないとされていた中国文学科の後輩らに対し、どうするべきかを導き示したなどと語り、中国語による創作モデルの確立に尽力したと振り返った。

(王宝児/編集:齊藤啓介)
https://news.yahoo.co.jp/articles/7ad9e920968d4bd0f20012a9363ca2e149c6c7dc

See also


李怡芸「前輩作家林文月安詳辭世 宛若六朝華人物典範」https://www.chinatimes.com/realtimenews/20230527001412-260405

劉靈均氏のツィート;


黒羽夏彦氏のツィート;
因みに、林文月老師と中国国民党の連戦元主席とはイトコ同士。